森博嗣のXXシリーズ最新作に、また「ナオミ」が登場した。ディープな森ファンのあいだでも「いったい誰?」とささやかれている、というかつぶやかれているようだが……『黒猫の三角』などに出てきた早川奈緒美のことではないのか。香具山紫子より四学年上の茶…
池波正太郎の原作は未読。 時代劇ファンとしては嬉しい丁寧な造りだった。粋やピカレスクな魅力で惹きつけることが多い池波作品だが、今作はどちらかというと山本周五郎的な味わいがあった。 武家の次男に生まれたがゆえ、役立たずの誹りを受け“へそ者”とし…
毎週のように出入りの場面があって楽しい。「ではいり」ではなく「(ヤクザの)でいり」。 現代劇作家としての三谷幸喜、それも一部の舞台やドラマの書き手としての彼はわりと好きだが、時代劇作家としては今までどうも肌に合わなかった。『新選組』はまった…
『幕末相棒伝』 なんで微妙にカメラを揺らすのか? 野外をわざと白茶けたような色調で写すのか? 退屈しないストーリー展開だけど主人公がうるさい……くらいの感想しかなかったが、最後に堀切園健太郎Dと知って納得。あの演出家にしてはドラマ部分でさほど惹…
『俺の家の話』 最終回を見た今となっては、初回から見直したら重みと湿度を感じそうだ。長瀬智也の引退作品がクドカンでよかった。 『ハコヅメ~たたかう! 交番女子~』 原作はある程度既読。家族につきあうのでなかったら絶対見ないタイプのドラマ。原作の…
間違っても欧州で暮らしたいとは思わないが、ドラマはおもにイギリス以北の欧州ものを楽しんだ。 イギリス:『港町のシェフ探偵パール』はアメリカのコージー寄りミステリみたいになるのか?と危惧したが、大根はいないし、事件には苦味があるし、予想以上の…
上半期は、東日本大震災がらみの傑作『星影のワルツ』と『ペペロンチーノ』。喪失感と希望と人生の滋味が描かれて忘れがたい。 下半期は圧倒的に『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』。源孝志にはずれなし! 役者の業と妬みと欲望。歌舞伎にはくわしくな…
邦画より洋画、それもアクション多めの映画を多く見た年だった。 〆は「いとこたちの戦争」にフィクショナルな陰謀組織をからめた快作『キングスマン ファースト・エージェント』。ローテクなアクションに心躍り、ラスプーチンのコサックダンスに笑い、めそ…
『和田家の男たち』 大石静脚本で大昔、『オトナの男』というドラマを楽しんだ記憶があり、今作も男中心だからという理由で録画スタート。ドラムを生かしたBGMと男三世代のかけ合いにグルーブ感がある。 三話まで見たかぎりでは、二話が一番笑えた。宮澤エマ…
『今ここにある危機とぼくの好感度について』 演出はよい意味でNHKらしく、退屈させない。神崎が過去につきあった女の画像データを脳内でぱらぱら検索する絵作りが愉快。ほかによかったのは 神崎が国立大の広報になったと聞いて喜ぶ婚約者。「彼女が単純な女…
『俺の家の話』は悲喜こもごもの傑作介護ドラマでホームドラマで中年男の人生やり直しドラマで……ほかにもいろいろな形容が当てはまる。 寿三郎の女癖の悪さはばれたけれど、なんやかんやで仲良し家族だよね! のノリだった第七話から一転、第八話ではほころ…
時代劇専門チャンネルで『鬼平犯科帳』、『仕掛人・藤枝梅安』の新作発表があった。 『梅安』の過去作は一回くらい見てそれきり。新作にも興味はなかった。 『鬼平』は中村吉右衛門にとどめを刺す。時代劇関係者もあらたな『鬼平』は作りづらかろうと思って…
大津波にのまれ、海を漂流していた男性が43時間後に救助された実話のドラマ化。 ささやかな日常がいかに幸せだったか噛みしめる場面も忘れがたいが、乾いた布団が流れてきたというエピソードにびっくり(じっさいには自分で乾かしてから使ったとか)。それで…
宮城発地域ドラマ。NHK民放を問わず、地域発ドラマって当たりが多い、とあらためて思わされる。中央発より資金面では不自由でも、アイデアは自由に出しやすいのだろうか? 東日本大震災からちょうど10年目に、イタリアンレストランのオーナーシェフ小野寺は…
テレ東開局55周年特別企画。 麻生和子の原作『父 吉田茂』は未読。 吉田茂が主人公の映像作品としては、映画『小説吉田学校』(監督:森谷司郎)を超えるものがなかなか現れない。が、『アメリカ』は日本とアメリカの裏と表の交渉が描かれていて、わりとおも…
ネタバレあり。 「娑婆は辛抱の連続じゃけど、空は広か、ち言いますよ」 姐さんのこの台詞を聞けただけでも、この映画を見た甲斐あり。監督の取材力のたまものなのか、想像力のたまものなのか、自由を言い表すのにこんないい言葉があったか! と感動した。 *…
薔薇戦争を描く歴史ドラマ。 ホワイト・クイーンとは、そう高い生まれでもないのにヨーク側のヘンリー四世に見染められて王妃となったエリザベス・ウッドヴィル。原案はフィリッパ・グレゴリーの『白薔薇の女王』、”The Red Queen”、”The Kingmaker’s Daught…
『青天を衝け』 大森美香脚本で唯一おもしろかったのが、朝井まかて原作の『眩~北斎の娘~』。その朝井の長編『恋歌』は血で血を洗う水戸藩の抗争を描いた辛口の傑作だった。万が一、今年の大河が『恋歌』も参考にするなら、すこしは噛み応えのあるドラマに…
同じ池端俊策作品でも、おおむね俯瞰的な視点で描かれた『太平記』にくらべると、なるべく光秀から見える世界を中心に描かれる『麒麟』はダイナミックな味わいという点ではやや物足りないところがある。庶民の視点とやらを強調したいのか、東庵と駒の出番が…
空を渡る鳥、緑滴る丘陵、不吉な夕焼け、暖色系を効かせた場面、寒色系を効かせた場面。がらんとした家に置かれたタウトの椅子。 厳しい表情で椅子の設計図を描く巨匠と、真剣なまなざしでそれを見つめる少年。一人で考え込む青瀬、友や家族と語り合う青瀬、…
横山秀夫の原作は未読。 大森寿美男はもっとも信頼できる脚本家の一人である。今回のドラマ化にあたり、横山から出された条件の一つが今まで通り脚色を大森が担当することだったという(『TV navi』1月号)。この二人がタッグを組んだ土曜ドラマ『クライマー…
明治初期、人々の価値観が変わり奇妙な事件が多発する。洋行帰りの特命探偵・結城新十郎が謎に挑む。 脚本には期待できないので、開化期の風俗が楽しめれば御の字、と思って録画。NHKなんだからその気になればもっと撮影で魅せることができるのに! と惜しま…
池波正太郎の原作は未読。 鰺岡藩の暗君に打擲を加えた源四郎。源四郎を討てと上意を受けた十兵衛。二人の数奇な人生が交錯する。 心に沁みる時代劇である。 松竹が撮影に協力しているだけあって画面作りに安定感あり。日本各地の四季折々の美しい自然も堪能…
下調べゼロで、気晴らしになりそうというだけで鑑賞したが……大当たりだった。ネズミが苦手な人を除けば、幼児から後期高齢者までハラハラドキドキ、クスクス笑って時どきホロリ、と104分楽しめること請け合いのエンターテインメントである。『鬼』の映画が満…
11月に録画した時点では局名は”シネフィルWOWOW”。12月に入って”WOWOWプラス”と改名した由。JCOMと契約した時点では”イマジカ”だったが、なぜ451chだけころころ変わるのだろう……。 IT企業が経営するメディノックス医療センターでは、医学者の鈴木哲郎(向井…
池宮彰一郎の原作は未読。 1963年公開――もちろん見たのはテレビ放映――のぴりっとした工藤栄一作品や2010年公開のグロとパワー全開の三池崇史監督作品に引けを取らない映像化で、堪能した。 *近年のNHK BS時代劇は蝋燭に照らされた夜の邸内の撮影がことに魅…
黒沢清と言えばキーワードは「不穏」である。『CURE』は文句なしに不気味なホラー映画であったし、ドラマW枠で放映された『贖罪』は救いのないストーリーを増幅させる演出で胸糞悪いことこの上なかった。(←誉め言葉) *黒沢映画にしてはずいぶんとわかりや…
表紙と人物紹介以外はネタバレなし *加部谷が出てくる作品としては、久々に鈴木成一デザイン室がカバーデザインを担当。森博嗣のノベルズとしては、今までのメタリックなデザインと打って変わったブルー基調の海辺の光景なので、さわやかな青春小説っぽいの…
大森寿美男のオリジナル作品となれば、見ないわけにはいかない。この人が手がけた土曜ドラマは2005年以降、コンプリートしている。なかでもオリジナル作品『TAROの塔』、脚色作品『クライマーズ・ハイ』、『55歳からのハローライフ』、『64(ロクヨン)』の…
先月終了した『すぐ死ぬんだから』夫の死後、隠し子がばれたり、ヒロインに思いを寄せてきたみたいなポーズを取る男が実は結婚していたとわかったり……。いくらでもベタベタドロドロしたムードになりかねないところ、ハードボイルド・タッチが得意な松岡錠司…