BS-TBS 開局20周年記念ドラマ『上意討ち』

池波正太郎の原作は未読。

鰺岡藩の暗君に打擲を加えた源四郎。源四郎を討てと上意を受けた十兵衛。二人の数奇な人生が交錯する。

 

心に沁みる時代劇である。

松竹が撮影に協力しているだけあって画面作りに安定感あり。日本各地の四季折々の美しい自然も堪能した。脚本が金子成人、音楽が遠藤浩二というのも安心材料。これからも定期的にこの手の時代劇が作られることを願う。遠藤宗一Pは、理不尽に翻弄されながらも必死に生きていた人々を描き、(視聴者が)これからの人生を少しでも前向きに歩んでもらえればと願って、この作品を企画したとのこと。願いは多くの人に通じたのではないか。今は多様なジャンルの映像作品があるけれど、あらためて時代劇っていいなと思わせられた。

 

十兵衛は意外な幸せを掴み、源四郎は武士として、男としての意地を貫く。十兵衛役の永山絢斗は彼の得意な(?)誠実な人物を好演――殺陣はもうひと頑張り――している。源四郎役の尾上松也はたぶん褒めるのも失礼な安定感抜群のお芝居。言葉少なな役柄でありながら、行動の一つ一つに重みと説得力を滲ませる。彼のファンはカタルシスを感じるか、あるいは悲痛なエンディングに涙するのか? 中村梅雀が出てきただけで、画面に情と温もりが満ちる。

服部大二Dの名前は初耳。他の要素のレベルの高さにくらべると、演出のテンポだけは少々タイミングが惜しかったり、十兵衛と源四郎のなれそめの場面が滑っていたり。フジTVや時代劇専門チャンネルが作るドラマの演出家たちにくらべると、こなれていない感がぬぐえない。これから経験を積む機会に恵まれて欲しい。

ナレーションは疲れている時の余貴美子みたいだけど……梶芽衣子かな? と思ったら、そうだった。こういう仕事は声に力が残っている人にしてもらいたい。彼女は女優としてなら、まだ役どころがあるので、そちらで健闘していただきたい。