今年の連続ドラマ
『俺の家の話』
最終回を見た今となっては、初回から見直したら重みと湿度を感じそうだ。長瀬智也の引退作品がクドカンでよかった。
『ハコヅメ~たたかう! 交番女子~』
原作はある程度既読。家族につきあうのでなかったら絶対見ないタイプのドラマ。原作のエグさは薄めても勘所は抑えており、良心的でかつテンポ良いドラマ化作品だったと思う。戸田恵梨香は好みの女優ではないが、頼りがいのあるベテラン警官ぶりに説得力を感じた。そういえば、『俺の家』でもちゃんとやってたなぁ。
『和田家の男たち』
男三人で食卓を囲みながらあれこれしゃべる、男版『セックス・アンド・ザ・シティ』的な部分が最高。なかでも佐々木蔵之介演じる秀平が、底意地の悪そうな薄ら笑いを浮かべながら父親に突っ込みを入れるシーンはリピートしたくなるほどおかしい。優は名前の通り優しい性格で、今の若者に多そうなタイプ……って、設定はアラフォーだが。あまりに人にいいように使われるので、最後に爆発するのかと思いきや、そんなことはなかった。相葉雅紀は、悩みもがきながらも、少しずつ前進するアラフォー男を好演。
女性ディレクターが惚れた弱みで秀平の暴走を見逃すのかと思いきや、社会人の常識で行動する展開には、脚本家を見直した。
『青天を衝け』
脚本家の名前を聞いたときは、商売も政治も書けない朝ドラ大河になりそう、二回くらいでギブアップか……と予想したのに、意外にもその両方どころか、まったく期待していなかった水戸の抗争も生々しく描いていた。不明を恥じる。
維新後の若き新生国家ニッポンが株式会社やらなんやら新制度を次々と打ち出していく。なかでも郵便制度の始まりのようすを具体的に視覚化したあたり、小学生にもわかりやすく楽しめる演出で、これからの近代ドラマの手本になりそうだ。
佐藤直紀の音楽は、青天をつきさす勢いで進む江戸、明治の人々の勢いや志を格調高く表現した。明治のドラマの音楽としては、『坂の上の雲』とともに耳に残る。
吉沢亮はへたすりゃ顔のことばかり取り沙汰されそうな役者だが、ティーンエイジャーとしての登場部分からまったく危なげない芝居で、なによりすぐ熱くなる男特有の滑稽さを滲ませるところがうまい。終盤は、演出家の意向なのかメーク担当の考えもあるのか、年寄り臭が不足気味だった。副主人公の徳川慶喜は、よくある「知能は高いけど薄情」の「薄情」部分がない設定。草彅剛がここまで偉大なる最後の将軍を体現できるとはびっくり。父、斉昭役の竹中直人の暑苦しい芝居の正反対を見事にやってのけた。
平岡円四郎を紹介したのは、今作の功績のトップ3くらいに入りそうだ。有望株を見る目のある大人がいなけりゃ、活躍できなかった若手もいたのかもしれない。これまでの大河では軽く流されがちだった大隈重信や井上薫がちゃんと仕事をする上に、人間くさく生き生きしていたのも予想外。半海一晃の小村寿太郎再現率が高すぎ! いい人を演じる橋本愛は、個人的にはあまりしっくりこない。時節柄、主人公の妻はどうしても持ち上げないといけないのだろうが……。歌子を演じた小野莉奈は若いのにゆかしさと落ち着きがあり、今後も大名の奥方役かなんかでお目にかかりたい。敬三役の笠松将に、昔の優秀な日本人のたたずまいがあって立派。嫡男に過大な期待をかけて潰してもまだこりずに、孫に「専門を変えて跡継いでくれ」と言う栄一にはドン引きしたが、史実では敬三は見事に期待に応えたそうで、人間に与える環境の影響とか遺伝の影響とか考えてしまう。
最終の二話だけは、しょせんNHKのがっかり風味。あの路線でいくなら、お人形の交換という日米親善事業にふれればよかったのに。それにしても、ナイーブな国際派みたいな栄一像にやや興ざめだ。大陸人の狡猾さや欧米人の根強い人種差別意識、「俺らがルールブック」の本音をまったく知らなかったなんてことがあるのだろうか。
『岸辺露伴は動かない』はリアル視聴の暇がなく、お正月のお楽しみとする。