5月29日BSプレミアム『風の果て』再放送スタート
藤沢周平原作。
2007年は時代劇の当たり年だった。大河は『風林火山』でひさびさに質的に盛り返したし、木曜時代劇には『風の果て』があった。
『蝉しぐれ』ほど格調高くなく、『神谷』ほどチャンバラはない。土木工事の計画立案から完了までの苦労とか、婿入り先での姑や嫁との諍いとか、ふだん時代劇を見ない社会人にも楽しめる内容満載だ。中年期の主人公がかつての友とぎくしゃくする展開は、『銀漢の賦』の後半が物足りなかった時代劇ファンの慰めになるだろう。
なんといっても寂寥感ただよう岩代太郎の音楽が最高だった。小松亮太のバンドネオンとケイコ・リーのボーカルに痺れた。
主人公の青年期を演じるのが福士誠治。このまま行けば同世代では江戸もの役者としてトップになるかと思われたのだが……BSの良質な現代ドラマに出ているから、トータルで見れば順調だ。佐藤浩市と石田えりが、たいして仲の良くない中年夫婦を生々しく演じていた。野添義弘がうまいし、仲村トオルに意外な見せ場があるし、遠藤憲一の悲哀に満ちた瞳は絶品だった。涼風真世のファムファタールは嵌りすぎ。そういや斎藤工もいた。