『魔女がいっぱい』(監督:ロバート・ゼメキス)

下調べゼロで、気晴らしになりそうというだけで鑑賞したが……大当たりだった。ネズミが苦手な人を除けば、幼児から後期高齢者までハラハラドキドキ、クスクス笑って時どきホロリ、と104分楽しめること請け合いのエンターテインメントである。『鬼』の映画が満席で入れなかったら、『魔女』を見るのも一興では?

メインとなるのは、子供をネズミに変えちゃう悪い魔女どもと、ネズミに変えられちゃったちびっ子三人組&おばあちゃんチームの戦い。

冒頭、主人公ヒーローボーイが交通事故でとつぜん両親を亡くし、おばあちゃんの家に引き取られる。包容力抜群なだけでなく、今風ではない厳しさもあるおばあちゃんがすばらしい。落ち込んで何も食べようとしない孫をカワイソカワイソするのではなく、「食べ物を粗末にするのはよくないね。(パパとママが死んで)可哀想だけど、同情はしないよ」「神様は時どき理不尽なことをなさる。あたしらは受け入れるしかないんだよ」。祖母役のオクタヴィア・スペンサーは大地の母ならぬ大地の祖母のムードたっぷり。体もハートもでかい! 学はなくても知恵がある! のがばんばん伝わってくる。

ホラー・ファンタジーとなれば悪役にも華が必要で、ゴージャスな美女、アン・ハサウェイは大魔女にぴったり。身のこなしにも台詞まわしにも、歌舞伎じみた様式美を感じた。

孫が魔女に狙われていると知ったおばあちゃんは、「魔女が狙うのは貧しい子、ないがしろにされている子だ。高級ホテルに逃げれば追ってこないさ」とばかりに、孫とホテル住まいを始める。そんなお金がどこにあるのか?などと問うのは野暮な話。南部の高級ホテルも女性たちのドレスも、暖色系の美しい彩で目に楽しい。食事もコーンブレッドやらジャンバラヤやら、砂糖か油がたっぷりの見ているだけでお腹いっぱいになりそうなものばかり。

ホテルの厨房で毒づきまくるシェフも傑作だった。パワハラ・コードにひっかかる場面は削除、なんてやってたらコメディ映画は衰退の一途をたどるしかない。

ネズミの表情にも体の動きにも、CG技術はここまで進歩したのか、と驚かされる。エンドロールにDrapesというカテゴリーが出てきた。専門の技術者が必要なほどDrapeだけとくにむずかしいのだろうか。

エンドロールで初めて気づいたが、原作はロアルド・ダールだった。『ぼくのつくった魔法のくすり』も『マチルダはちいさな大天才』も愛読書だったが、実は『魔女がいっぱい』も既読かもしれない……。記憶力を取り戻す薬がほしい。