『パンドラⅣ AI戦争』一挙再放送

11月に録画した時点では局名は”シネフィルWOWOW”。12月に入って”WOWOWプラス”と改名した由。JCOMと契約した時点では”イマジカ”だったが、なぜ451chだけころころ変わるのだろう……。

 

IT企業が経営するメディノックス医療センターでは、医学者の鈴木哲郎(向井理が開発したAIによる患者の診断が行なわれていた。
人間の医師が行なうよりも短時間で正確に、しかも無料で行なうAI診断は世間で評判を呼ぶ。

AI診断を導入したIT企業代表の蒲生俊平(渡部篤郎は、海外に後れを取らないためにも医療のAI化を進めていくべきだと主張。
しかし、医師会会長の有薗直子(黒木瞳は「時期尚早」と難色を示し、さらに優秀な外科医の上野智津夫(原田泰造もAIに診断された患者の手術に当たることを不快に思っていた。

 

パンドラ・シリーズは、というより日本のドラマは社会派となると反権力やら「専門エリアに閉じこもるより市井の人々とのふれあいを」みたいなワンパターンに辟易させられることが多く、残念ながら『AI戦争』でもその嫌いを免れなかった。それでも、演出のテンポがだれることがなく、BGMが過剰にならず、照明も安っぽくならないのはNHKWOWOWの長所である。津嘉山正種の登板率が高いのも好み。今回は田舎の診療所の医者役でいい味を出していた。

オリジナル脚本はベテラン井上由美子。いくつかさすがと思えるぴりっとした台詞を聞かせてもらった。

「日本人ほど成功者に厳しい国民はいない」は、ホリエモンをモデルにしたと思われるIT企業グループCEOの台詞。余命宣告を受けても自暴自棄になったりせず、責任をもって仕事の始末をつけるあたり、ありがちなIT長者の造形とちがって深みのある造形だった。渡部篤郎は若いころより柔軟性のあるいい役者になった気がする。

「僕がAI医療に反対なのはね、それがあったら人間の医者が駄目になる、AIに頼ればいいと思っちゃうからね。むずかしい手術を成功させてやるとか、名声を上げたいとか、そういう欲がなくなったら、人間は駄目になるんだよ」……うろおぼえだが、このような台詞を上野医師(原田泰造)に言わせていて、これも借り物ではないAI観でなるほどと思わせられた。

パンドラ・シリーズのエンディングテーマは、トニー・ベネットが歌う”The Good Life”。よき人生を手に入れようとして失敗しがちな人間たちのドラマを見たあとで聴くと、賛歌というより鎮魂歌に聴こえないこともない。