今年の国内ドラマ

民放の連ドラでリアル視聴したのは『コンフィデンスマンJP』のみ。古沢節は健在だったものの、『リーガルハイ』第一部や『デート』に比べると、コンマ数秒自分好みのテンポより遅かったり、どんでん返しがしつこく感じられたりで、永久保存する気にはなれず。

NHK時代劇専門チャンネルはいろいろおもしろかった。時代劇は『雨のくびふり坂』がダントツ。大森寿美男はこれだけでなく『どこにもない国』も高品質で、極私的に(脚色)脚本家ベスト5からはずれたことがない。現代劇は『不惑スクラム』も『真夜中のスーパーカー』もよかった。まだ感想を書いてないものでは……

『マリオ~AIのゆくえ~』
終盤の青く煙る廃工場内の一瞬だけで忘れがたい映像作品となった。あの場面だけでも映画館で観たかったと思わせる。台詞としては、前半"人間の感情"やら"人間の行動"やらについての既成概念を揺さぶる問いかけが刺激的で、良質のSFドラマになっていた。"中学生の悩みはいじめ"というマンネリからテレビ作家はいい加減脱するべきではないか。"AIと暴力"を描くならほかにも切り口があるだろうに。オリジナル脚本を書いた前川知大は気鋭の舞台、映画脚本家でもあるらしい。次回のBSオリジナル再登板が楽しみである。吉田照幸は『あまちゃん』、『洞窟おじさん』、『弟の夫』、『悪魔が来りて笛を吹く』に引き続き視聴者の目をくぎ付けにする演出を実現。人の心をえぐる痛ましい場面にも独特の浮遊感を漂わせることができる人だ。西島秀俊はよい作品に呼ばれるなぁ。正月2日午後5時30分再放送とはめでたい!

『忍べ! 右左ヱ門』
『LIFE』はたまにしか見ない。今回は時代劇風味ならと軽い気持ちでチェックしたら、予想以上の大収穫。おふざけもシリアスもチャンバラもなんでもござれな古田新太堤真一の芸を堪能した。『アシガール』で時代劇適性を示した伊藤健太郎が出ていたのも嬉しい。若君様と忍者の次は何をやってくれるだろう。

『炎上弁護人』
キャストの過半数のなんというヤンキー臭! それもあいまって(?)地に足の着いたネット談義ドラマになっていた。ネットに対する理解も人間を丸ごと受け入れる力も、『炎上』の脚本家、井上由美子のほうが『フェイクニュース』の野木亜紀子よりはるかに上である。宇崎竜童の「twitterだって人間が書いてるんだから、妬みだけじゃなくて全部の感情があるに決まってる(意訳)」なんて、まさしく! と膝を打ちたくなる台詞である。


マイベストは『満願』。鬱屈や不信といった負の情念が色濃く描かれたが、思い返してみれば"手段に過ぎない殺人"三連発なのだった。 三作のなかで白眉を挙げるならヤスケンの代表作になりそうな第二夜『夜警』。文字通り息もつかせぬ60分で、昨今ではめずらしいハードボイルドの魅力も堪能した。BGMは今も耳に残る。榊英雄の演出をまた拝みたい。最終夜の『満願』は、前二夜とは毛色の違った女の事件簿。うすら寒い満願成就の話である。旧家の誇りを胸に秘め、きちんとしているけれど夫にしてみれば"気ぶっせい"に違いない奥さん役なんて、今どきの女優さんにはむずかしそうなのに、市川実日子が意外に好演していた。お盆シーズンでNHKというと関係ない戦争ネタをねじ込んできそうなものだが、この作品でも『太陽を愛したひと』でもそれがなかったのは重畳。