今季のドラマ

『青天を衝け』

大森美香脚本で唯一おもしろかったのが、朝井まかて原作の『眩~北斎の娘~』。その朝井の長編『恋歌』は血で血を洗う水戸藩の抗争を描いた辛口の傑作だった。万が一、今年の大河が『恋歌』も参考にするなら、すこしは噛み応えのあるドラマになりそうだが……初回の朝ドラのノリを見る限り、期待薄である。官職呼びが『麒麟がくる』よりきちんとしているのは意外。水戸の演習シーンには若干心が浮き立ったが、『八重の桜』初回の追鳥狩ほどの重厚感は出ずじまいであった。

バイプレイヤーズ名脇役の森の100日間~』

テレ東は本当に自由だな! 局をまたいだドラマのパロディを気楽に笑いながら見られる、ある意味深夜ドラマのお手本である。

 『江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~』

原作未読。すこしでも時代劇要素があればチェックする習性があるゆえ、録画中。主演の岡田結実はまだ二十歳だとか。幼稚化いちじるしいと言われる昨今の若手女優にはめずらしく、腹が据わった雰囲気を出すのがうまく、姉御肌のキャラがはまる。声質もきゃぴきゃぴしていなくてよい。近年中にNHKの金曜時代劇あたりで拝みたいものだ。

『ドリームチーム』

椎名林檎の音楽と演出のテンポは好みだが、ストーリーがいったいいつまでやるのかと言いたくなる『主婦無原罪論』なのに辟易して二話でギブアップ。再就職がそうやすやすといかないことを「少しは」描いたのがまだしも、とは思う。コンサルのエピソードで、頭を使うより現場で汗を流すべき、みたいな価値観が出てくるのも、まああいかわらずとしか思えず。

『俺の家の話』

鉄壁のクドカン作品。主人公の家が能の宗家というのに絡めて、回想シーンを能で表すアイデアが秀逸。視聴率を稼ぐためなら、児童虐待などのどぎつく湿っぽい再現場面を出すところ、能もどきにしていることで、ある意味昇華された表現になっている。介護する側される側の、一筋縄でいかない感情を言わせる台詞も、さすがとしか言いようがない。

『六畳間のピアノマン

今のところ、NHKドラマのいいところだけが出ている印象。啓介が「ブラック企業から逃げろ」だけでなく、再就職の相談にも乗るところがよい。加藤シゲアキには書評番組『タイプライターズ』でしかなじみがなかったが、浮ついた感じがなく三浦貴大と対等に芝居しているので感心した。次回は、元パワハラ上司が改心&再生する展開なのだろうか? 悪役の糾弾で終わらなそうなところにも、作り手の志を感じる。