『すぐ死ぬんだから』第一回

内館牧子というと、自分はお呼びでない人というイメージだったが……大河『毛利元就』と時代劇『白虎隊』(2007年)は視聴済みであった。
高齢の名女優、三田佳子が主演なので、まあ生きているうちに拝んでおくかと思い録画開始。

日本のホームドラマにありがちな嘘くさいしおらしい奥さんが一人も出てこない! 亭主に敬語使ってる人もいなくて、会話が超リアルだ。内館氏が人気絶頂だったころ、プロデューサーから「その台詞は専業主婦が気を悪くするかもしれないから、書き直して」と言われたというエピソードを読んだことがある。だが今回のドラマは、(日本のドラマにはめずらしく)主婦に媚びていない部類ではないか。
派手な服を着て、雑誌の取材を受けて舞い上がり、嫁の早足についていけずに足を痛める主人公、ハナ。
母親の若づくりをたしなめながら、自分の容姿を客観視しているかどうか疑わしく、人生相談ブログをせっせと書くハナの娘、苺。
酒屋の店番よりアートに熱中するハナの嫁、由美。
三者三様にちょっとイタい。しいて言えば、いまふうの承認欲求が強いところが共通点か。同窓会でハナを白眼視する婦人たちは、逆にひがみっぽさが見苦しい。もともと、まったく女を美化しないところが内館の特徴なのだろうか(ほかの現代ドラマも見てみよう、とは思わない)。

ハナは酒屋の女将さんだった人で、夫との会話からも二人の夫唱婦随ぶりがうかがわれる。が、ときおり台詞のせいか、もともと下町風ではない女優のたたずまいのせいか、「自分らしく」みたいな言葉がサラリーマン家庭の有閑夫人みたいな雰囲気を醸し出すときがあり、そこだけはちょいと残念。

平均年齢高めのドラマだが、テンポはのろくないし、安川午朗のBGMもいい塩梅だし、来週も楽しみだ。
ここで再確認して、おのれの勘違いに気づいた。原作は内館牧子だが、脚本は長田育恵という人が書いたようだ。長田氏の作品は初見。最近のNHKのHPは大河以外はお粗末なものが多いけれど、制作と演出家の名前くらいは出さないとあまりに彼らが気の毒である。