『おんな城主直虎』第39回『虎松の野望』

"まだ十五歳"を強調するためとはいえ、虎松の顔芸のしつこさに辟易した。
ただ、小才覚のあるこわっぱが大人にぺしゃんこにされる展開には、知的ゲームを見るおもしろさがあった。振り返ってみると『直虎』ワールドは、未成年を不当に活躍させないし、いわゆる女子供の正論、きれいごとが通らない大人の世界である。

亥之助が虎松に諄々と説く。「寝首をかくには寝所に入らなくてはなりませんな。そのためには、小姓に上がらなくてはなりませんな」。近藤が逃亡を決意する場面にも共通する、過程をないがしろにしない森下流のよい台詞。

家臣の侃々諤々をうまく利用する家康。阿部サダヲの表情が、『真田丸』より前のお茶の間で共有されていた"食えない古だぬき"っぽくなってきた。最終回までにどこまで重みが出せるだろう。

虎松、亥之助と同時に高瀬も配役チェンジ。高橋ひかるが落ち着いて好演していただけに、今回の妙に明るい高瀬には違和感を持った。

瀬名役の菜々緒が出てくるたびに「あと何回出演できるの?」と思ってしまう。今回は信康も登場して胸アツ。気迫を感じさせるつらがまえに見憶えが……と思ったら、やはり『重版出来!』第5話で若き日の久慈社長を演じた平埜生成だった。昨年6月に「単館系の映画かNHK土曜ドラマで再会したいタイプ」と書いたが、大河で再会できるとは! キャスティングした人に拍手を送りたい。瀬名と信康の最期の場面では、大河らしい重厚なムードが醸し出されると信じている。