『BORDER 贖罪』

連ドラ『BORDER』がたいそう面白かったと聞き、そのうちDVDレンタルでもしてみようとぐずぐずしているうちに、SPドラマ放送の日が来てしまった。石川の葛藤への理解などは連ドラ視聴済みの方々に及ばないながら、CMカットで1時間34分、独特の世界に浸ることができた。暗めの色調が落ち着くし、アングラ4人組には少々漫画じみた滑稽味を感じつつも、いつもの金城一紀の臭みがなくて助かった。石川にだけ見える人物の出し方が巧みで、このあたりはWOWOWレベルではないか。

正義の殺人と悪の殺人に違いはあるのか? 正義の殺人を犯した感想は? 主人公は終盤で答えを出す。これからずっとうじうじするだけだったらかなわんなぁと思っていたが、納得できる言葉を聞けた。もし続編が作られたら、現代版必殺仕置き人めいたドラマになるのだろうか?

脚本と主演以外にも『CRISIS』とまぎらわしい要素あり。一番ちがうのは、『BORDER』がアクションドラマではないことか。終始沈鬱な表情ながら断じて一本調子にはならない、小栗旬の表現力に魅了された。ボソボソしゃべっても聞き取りやすいのは舞台の基礎があるから? NHK以外に居場所がないかと思っていた青木崇高がいきなり出てきて驚かされる。骨太な個性を生かすというより、コミックリリーフ的な役割だった。女優の使い方がしっくりくるのは、金城流職業ドラマのいいところ。波瑠はまっとうに仕事をする有能なプロを体現、中村ゆりかは薄幸の女にはまりすぎ。

オープニングのテロップで「これはイケそう」と思わせたのは「音楽:川井憲次」の文字。ぜいたくを言えば、もうちょいドライな感じにしてもいいのにと感じた場面がちらほらあった。