『女川 いのちの坂道』
実在の"女川1000年後の命を守る会"の活動をもとに、復興半ばの街と青年たちをとらえたドラマを、ロードムービータッチで描くフィクション。NHKは昨年からドローンをフィーチャーしたドラマ作りが目に付く。今回は咲の家があった場所から一気に上昇するアングルにぐっと引き込まれた。平埜生成以外の要素には期待せずにチェックしたが、予想以上の収穫であった。皆川猿時、多根楽子、高橋務の渋い助演が忘れがたい。
案の定、女川原発が避難所の役割を果たした件にはふれなかったものの、全体としてはNHK的な糾弾趣味もなく、これからを生きていく人々に敬意を払った良作だった。
母親が職場の年寄りを助けに浜近くに引き返し、帰らぬ人となってしまった咲。生き残った老婆への逆恨みのような感情には、それは仕方ないだろうという説得力があり、またそれを乗り越えるエピソードの作り方も真摯でよかった。ただ、あのイベントでもうちょっと車椅子を活用できなかったのかと思えなくもない。
咲の父親の「おれは(東京に行かなくても)いい。ここがいい」がよい台詞。
未来の女川町民に向けて女川中学卒業生が寄せた碑文
―― 今、女川町はどうなっていますか? 悲しみで涙を流す人が少しでも減り、
笑顔あふれる町になっていることを祈り、そして信じています
石碑を囲む、よい顔の先生方、生徒諸君の写真。
そして、これ以上はない順番で生徒の作品が一句一句画面に出る。(もちろん、この番組内で発表されなかった作品が数多くあるとはいえ)三者三様とはまさにこのこと。
夢だけは 壊せなかった 大震災
まっててね 今届けるよ おばあちゃん
うらんでも うらみきれない 青い海
脚本:岡下慶仁、脚本協力:田中直人
撮影:夏海光造、諸川博一
演出:石井永二
プロデューサー:合津直種
制作統括:茂木明彦、三浦尚
今後、この人たちのうち一人でもかかわったドラマやドキュメンタリーが作られたら、見ることにしたい。