『不惑のスクラム』第1回『老いてなおヤンチャであれ!』

ラグビーは後退しながら前に進む。まるで人生みたいじゃないか」

画面のなかでいい風が吹いている。
あまり予備知識は仕入れず、『不滅のスクラム』と勘違いして見始めたが、期待を超える第1回だった。先日の『太陽を愛したひと』からスポーツが絡むよいドラマが続いている。『不惑』に関しては、2019年に日本でワールドカップが開催されることも踏まえているようだ。ともかく、二作とも放送時間の長さにくらべて内容が豊かなのが印象に残る。

切なさがにじむ岩代太郎のBGMが物語にぴったり。

ウタさん(萩原健一)が丸川(高橋克典)をラグビーの練習へと誘い出す。
「ちょっとだけー! 考え込まない。行こ」
「考え込まない」っていい台詞だな。人の心の中に土足で踏み込むような真似はせず、いい球を投げて相手を動かすウタさん。彼は、草野球ならぬ週末ラグビーチーム〈大阪淀川ヤンチャーズ〉の創設者にしてフルバック。そして重い病を抱えている。彼が決めたチームへの参加資格は、四十歳以上であること、ただそれだけ。
ショーケンが訳ありの飯場の親方とかではなく、人品卑しからぬ(明らかに)元エリートサラリーマンをやるのも、若いころのあれこれを思うと感慨深い。いい歳のチームメイトたちに慕われるのも納得の"人間の幅"を感じさせ、しかも軽みを失っていない。夏木マリも彼女にしてはエキセントリック感のないキャラなのが新鮮。シックな奥様が嵌っている。

丸川は、難癖つけてくる男を振り払おうとしはずみで傷害致死の罪を犯した過去の持ち主。死んだ人に同情すべきなのだろうが、痴漢冤罪とコンボの丸川かわいそすぎである。都市部で電車通勤している男性視聴者にとっては他人事ではないだろう。

今後は、丸川が他者に心を開いていく過程と、他のメンバーの家庭や職場の事情が並行して描かれていく模様。四十過ぎには見えないが、高橋光臣が「絶対あとでフォーカスされるだろう」と思わせる暗さと屈託を漂わせている。出番の増える回が楽しみだ。主演さんともども、ラグビーの経験があるらしい。