三連休中のドラマ

『乱反射』
石井裕也が脚本演出というのに惹かれて録画。期待以上のおもしろさであった。

ブリタニカ国際大百科事典小項目事典によれば、
「乱反射:
物体の表面がなめらかな面でないとき、その凹凸のために入射した光が,いろいろな方向に反射散乱される現象。平面のように見える面でも光の波長と同程度の尺度でみると乱雑な凹凸があるために、一方向から光を照射しても乱反射が起って,面上の各点が二次的光源になるので、どの角度からでもその面を見ることができる」

新事実が明らかになるたびにまぶしい乱反射の映像がはさまる。
映像の色使いや演出のテンポ、そしてBGMの少なさが映画的。
犬のふんの始末を怠るお散歩老人を抜かせば、お客様天国で疲弊する人々の不作為が積もり積もって幼児の死を招いたというお話。
バイト内科医の愚痴にも、市役所道路管理課の小林の「ネチネチネチネチネチネチ」にも、おおいに同感する視聴者が少なくないと思われる。小林を演じた芹澤興人は見覚えがあると思ったら……石井作品『おかしの家』で天使を演じた人か!
市民運動のいい加減さを描くとは、テレ朝系にしてはなかなか結構。
加山が過去に書いた役所糾弾記事か病院糾弾記事も今回の事件の引き金になっていたらもっとおもしろかったのに(毒)。現実にこの二つの業界で働く人々が委縮しているのは、隙あらば叩きたがるメディアにも原因があるのだから。

原作がどうなのかは知らない。が、三隅老人がマナーを守り、悪ガキが騒がず市民運動のおばちゃんたちも石橋造園土木の仕事を邪魔しなかったからといって、強風の日に問題の木の伐採が終わっていたと言い切れるのだろうか? だったら、その時こそほんとうの理不尽な事故になる。このドラマに出てきた程度の手抜きはあっても、大筋ではまじめに作業する日本人が多いからこそ他国比で安全衛生が保たれ、その結果不慮の事故に耐性がない人間が増えている。

光恵のパート仲間がいい人で救われた。
最後にご丁寧に二度目のルール違反ごみ捨てが映る。被害者もまた無謬ではないというだめ押し。

本邦には珍しい視点の良質ドラマ! と感激させられた翌日が『指定弁護士』で、落差の大きさに笑える。あまりに見え透いたプロパガンダで15分で録画を削除。

不惑スクラム』第4回『命のパス』
毎度毎度たったの30分と感じさせない深く豊かな世界を見せてくれる。『風の果て』並みに、岩城太郎のメロディーが切ない。
ウタさんは梅塚に遺言を託し、丸川に思いを託す。いろいろな形で命がつながれていく。
ウタさんの臨終場面を入れなかったのは見識。第2回で丸川が陣野と娘の仲を取り持ったことで、陣野が丸川の味方になる展開がよかった。これからも丸川が人の力になれるエピソードがあるとよいな。
麦田は新聞記者らしいエセ正義感で丸川を排除するのかと思いきや、身内の問題があるからどうしても許せないという。チームに帰ってきてもそれが変わらないところが大人のドラマ。最終回では少し変わる……かな?
勝利にこだわる鬼キャプテンを演じる村田雄浩がたいへん魅力的。緒方を演じる徳井優もいい。徳井氏と渡辺いっけい(陣野)は、「いるいる、こういう愛すべきおっさん!」と思わせる。

来週は高橋光臣に見せ場がありそうで楽しみだ。

 

西郷どん』第36回『慶喜の首』

ふきはビジュアル完璧なのに、なんでこう長らく大河ファンやってる人間の神経を逆なでする台詞ばかり言わされるのだろう……高梨臨ちゃんは、再来年あたりまともな役でぜひカムバック!
遠藤憲一は大河にかぎってはあまり役に恵まれない印象がある。旗本風情がなんで畳に突っ立ったまま上様に物申すのか!?
小松帯刀不在でつまらん。実は寿命が尽きていてナレ死ですらないとか……と疑い調べてみたところ、明治3年までは存命だった由。あと何回か出演するのだろうな?!!

チャンネル銀河で格調高い『八重の桜』の再放送が始まった。あとはいつ『西郷どん』の録画視聴を打ち切るかが問題というところだが、今回、慶喜が勝の前で内戦激化を望まないと明かすあたりからはわりとおもしろかった。白人連中の魂胆を見抜くだけの頭脳があり、日本を異国に手渡してはならぬと思うだけの倫理観もあるという設定。このあたりの描写は林真理子の原作(当方未読)を活かしているのだろう。女史の『正妻』では、慶喜大阪城から逃げた理由を上記のように書いていた。
別ドラマで西郷を演じたことのあるふじもっさんが山岡鉄舟役で出てきて鈴木亮平と向き合うのは、妙な感じ。
最後に北川景子が出てきた瞬間とっても心配してしまったが、ちゃんと台詞をしゃべっていてほっとした。でもやっぱり来週は、心拍数を挙げながら彼女の演技を見ることになりそう……。