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『4号警備』第3回

久しぶりにドラマを見て感動した。
トーカー被害に遭ったうえにネットで中傷されて故郷に帰るしかなさそうだった由宇が、ガードマンとしてガードキーパーズで働いている! 架空の人物の話なのに心の底から「よかったな!」と思ってしまうとは。

今回は人間を一面だけで決めつけない、多面的に描く作劇にしみじみした。鬼平に通じる味わいと言ったらこじつけか……ちょっと違うか。
一見軽薄そうな本田社長が、じつは社員の心身を案じていた。「生きて帰ってくる社員がいい社員だ!」
ブラック企業の社長はひどい奴だけど、子どもまで非難されるのはひどいよね……までならありがちな手法だが、そのあとに見ごたえがあった。社長を罵倒する朝比奈の姿で視聴者に少々留飲を下げさせておいて、最後に石丸の口から「お父さんは人殺しじゃないよ」、「あなたはもっと楽になってもいい」と語らせる。儲けが減ってもいいじゃないかなんて他人事だから言えるんだよなとか、欧米の企業だったら社員に変なゼッケンつけるいじめはなくともいきなり首切りだよなとか思ってしまった。が、とにかく嫌われ者に"加害者"のレッテルを貼って済ませない、宇田学の物語作家としての矜持に惚れた。公式HPの"「少しの勇気があったら」守れるものがある"が、次回はどんな形で描かれるのか楽しみだ。神谷の旦那が活躍してくれますように。

石丸の娘を演じた久保田紗友が、面長で大人びていて観察眼が鋭そうで忘れがたい。もう一度くらい登場してほしいものだ。

『おんな城主直虎』第15回『おんな城主対おんな大名』

トーリーはそこそこ骨っぽい。
一番の期待は菅野よう子の音楽だったのだが、自分が勝手に期待していたとんがったメロディーとはほど遠い――プロデューサーの意向なのかどうかわかりかねるが――子ども向けの時代劇アニメに流れそうなBGMがたびたび流れる。
昨年の『真田丸』は大大名とくらべていかに国衆が小さな存在であるかをユーモアまじりに描いていた。今年は、今川にくらべ、井伊がいかに内向きで学習能力に欠けているかを、表面的には甘めのBGMをまぶしたりしつつ、実質的には容赦なく描き出している。
近年は主人公の性別にかかわりなく"政治"や"職能"をまるっきり語れない大河が散見されたが、その点今年は健闘している。脚本や演出の格調、主演の演技力が比較にならないので引き合いに出すのも恐れ多いが、徳政令についてある程度踏み込んだのは『花の乱』以来ではないか。労働と無縁で暮らす上級(でもない?)武士の奥方や令嬢の生活費を"化粧料"と称するとか、それは各自所有する田畑の上がりだとか、小学生でもわかるように丁寧に説明されていて、なかなかためになる大河では?

序盤は「大河ドラマを見ている!」という心地にさせてくれたのは佐名役の花總まりの所作と台詞回しくらいだったので、退場が残念だった。その後は浅丘ルリ子が締めてきたが、寿桂尼もそろそろ寿命が尽きそうだ。
クドカンのドラマでおなじみの小松和重は、画面の隅にいるだけでも楽しくなる。市原隼人傑山は腕の筋肉を誇示する場面より戦う場面が増えることに期待。ムロツヨシはいかにも当て書き。「銭は力じゃ」をNHKで日曜8時に堂々語れる人物は痛快。

21世紀に入ってからのお気に入り上位が、現在再放送中の『風林火山』と『八重の桜』三分の二、というのは揺らぎそうもない。『風林』は権力闘争の描写やコメディセンスだけでなく、女性陣の描き分けも好きだった。『直虎』は女にもいろいろいる、という当たり前のことをわりと公平に描いていると思う。ヒロインの身近にいる若い女性だけでも、政治センスと客観性のある賢いなつ、気のいいあやめ、視野が狭くぐちゃぐちゃした感情だけで生きるしの、と三者三様である。第15回も知恵がつきはじめた直虎と、長きにわたり知力で家中をまとめてきた女傑の対比が利いていた。やぶからぼうに「ほ~、お前はみどころのあるおなごじゃ」なんていうんじゃなくてなにより。法律論議で押したり引いたり、施政の基本方針を問い、領民の信望を示す書状を目にしてこれなら政次より直虎に任せた方が領地が安定しそうだ、とおんな大名が相手を認める根拠がきちんと示されているのが気持ちよかった。直虎がめざすのが緊縮ではなく「潤すこと」なのもあっぱれ。

子役、本役通してヒロインがどうも苦手だ。「未熟者だけどがんばってま~す」みたいなノリが消えるのは秋ぐらい? びっくりする演技の巧い下手は全体的な演技のレベルに通じるという持論は、今年も変わらない。

海老蔵が信長役と聞いた。本格的な〈敦盛〉の披露が待ち遠しい(やや問題発言)。

 

『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.2

スカッと終わらない、主役チーム側が大人の解決策を受け入れたお話。
「辞書から"秘密"という言葉を削除するべきかもしれない」
「あいつらは鞭も入れないのによく走る」
鍛冶の台詞に味がある。

冒頭の格闘技訓練シーンが嬉しい。二刀流はカリか? 主演のお二人はアクションにもこだわりがありそうで、今後の見せ場が楽しみだ。

アリスとドロレスが客を取らされたのは痛ましいことだが、「絶対にほんとうの家には帰りたくない」状況はさらに陰惨である。
ひじょうにヤバい過去がおありらしい稲見のしたたかさと暗い目に惹かれる。
西島秀俊石田ゆり子が敬語で会話していると、なんだかムズムズする。二人の後ろ姿の映し方、BGMとも「TBSならもうすこし重厚風味にできたのでは?」と思った。「いつ戻れるか分からない」林智史って……『ダブルフェイス』の森屋みたいにならないだろうな!?

『小さな巨人』第1話

『LEADERS2』は手堅い作りだったし、現代ものなのに内野聖陽がくどすぎる芝居に走らなかったし、予想よりおもしろかった。ただ、怒号土下座涙ぬきでも熱いドラマはできるだろうに、といささかうんざりもさせられた。

小さな巨人』は、しょっぱなのダーッと並んだ会議室の机とか、主人公夫妻のキャスティングとか、ちょっと『シン・ゴジラ』風味があってTBS日9のマンネリ打破か!? と期待してしまった。しかし「捜査は理論です」と言い切った香坂は第1話中盤、早々に「捜査は勘」派の汗臭い渡部にほだされたもよう。長谷川博己は今の中堅主演スターでは唯一エリート兼インテリをやれる人なのに、主人公が浪花節方面に行ってしまうのはもったいない。
やたら内助の功くさくもなく、仕事に無理解なわからずやでもなく、ひょうひょうとした妻(市川実日子)の造形が新鮮に感じられる。

俳優に怒鳴らせることでドラマチックな効果を出す手法は好きではないが、本作では発声がしっかりした役者ぞろいなのでその手のシーンにも不快感は覚えない。とくに、神尾佑は毎回2、3回怒鳴ってくれてもいいくらいだ(依怙贔屓)。

たまに『MOZU』を彷彿させるBGMが流れたが、音楽担当は木村秀彬とかで、こちらの聞き違いだったのか。

監修が福澤克雄……『半沢直樹』とか『下町ロケット』とか『LEADERS』シリーズとか演出した人なのか。う~ん、最後に小野田が香坂に土下座して香坂が離れ島に飛ばされる、なんてのは願い下げだなあ。
せっかくオリジナルで勝負するのだから、過去のヒット作になかった要素を一つくらいは入れて欲しい。「所轄が云々」、「キャリアが云々」には食傷している。この手の台詞をせめて1割減らしてもらえないものか。

『4号警備』第2回

『CRISIS』より地道で危険なアクションがたまらない。最終回までにどれだけエスカレートするのだろうか?
インターネットがらみの犯罪というのは、卑劣さが際立つ。
「朝比奈! 朝比奈!」石丸の必死の呼びかけが印象に残る。叫んだだけだったけど、あの瞬間、石丸も過去の挫折ゆえの傷のようなものから少し立ち直れたのではないか。
強面のボクシングジムのオーナーの「自分を殴りつけるだけでは強くならない」が気になる。朝比奈はこれからいかにして強くなるのか? 麿赤児はいるだけでありがたい存在。

 

『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.1

重版出来!』以来、自分から見たいと思う民放の連ドラが一つもなかったが、今期は『CRISIS』と『小さな巨人』が楽しみだ。

新幹線の狭いエリアでの立ち回りにわくわくした。とくに、犯人が振り回すリュックが稲見の顔すれすれ!の場面が印象に残る。(CGだったりするのか? だとしてもおもしろければよい)
根性の腐ったボンボンを大山が引っぱたく場面は弱すぎ。そもそもグーパンチにすべきではないか。アクションに慣れてない女優さんには難しいのかな。

画面の作りとか音楽とか、もうすこし重量感がほしいと思わないでもなかった。
日本のドラマにしてはドライな台詞が魅力的。金城一紀は映画『フライ、ダディ、フライ』とドラマ『SP』シリーズの脚本担当だったのか! ならば『BORDER』も見ればよかった。

チームが専門家集団で、ちゃんと頭を使って働いているのでほっとする。なんで臭いで爆弾の中身がわかるのか疑問だが……。新木優子は"綺麗"と"可愛い"の中間くらいで、無駄な笑顔がなく、かといってわざとらしい反抗的態度もなく、捜査員を魅力的に演じている。
西島秀俊はもっとモズモズしいのかと予想したら、意外と温厚風味。それともこれから闇をのぞかせる? またしても石田ゆり子と共演か。ゆり子さん、今度は最終回までピンピンしていてほしい。
ちょんまげのない小栗旬を見るのは久しぶりだが、うまくてかっこよくて手堅い演技である。マンションから飛び降りるシーンは『TAJOMARU』を彷彿させる。
田中哲司は、登場シーンで「結婚していろいろなまっちゃってるのか?」と思わせたが、どうやら大丈夫そうだ。

特捜班の過去の「骨折」が気になる。

『4号警備』スタート

作:宇田学
自分にとってこの人の前作は『ボーダーライン』。若き消防士の成長を中心に、消防の世界に生きる男女の葛藤や世相を描いた秀作だった。今回も出だしはしごく快調。主人公に回し下痢……ヒドい誤変換だ……回し蹴りをやらせたり、カーチェイスで車を壊したり、アクションでもがんばってくれて嬉しいが、NHKがこういう方向にサービス精神を発揮するのはよくあることなのか?

主人公、朝比奈は仕事熱心ながら口の利き方はいかにも今風の若者。真面目なドラマだが息苦しくさせない工夫が、彼の人物造形等等に散見される。

誰もが盲目の広瀬に遠慮する中で、朝比奈だけは本音をぶつけ、最後には広瀬から感謝の言葉を勝ち取る。『ボーダーライン』同様、少々リスキーなネタからも逃げずにドラマを作る姿勢に頭が下がる。

相棒の石丸を演じる北村一輝はなよっとしたしゃべり方で、今後の人物像の掘り下げが気になる。
警備部長を演じるのが片岡鶴太郎。『ボーダーライン』の筧利夫のように、味のある指導者を見せてくれそうだ。

いつも悲劇のヒロイン風の窪田正孝(朝比奈)や木村多江(ガードキーパーズ社長)が、今回は明るかったりおちゃらけたりで新鮮味がある。
HPによれば、第4回のゲストが高橋光臣とな! 現代ドラマでもいい演技をする場を与えられますように。

しばらくは土曜夜7時半から8時45分まで、NHKの良い面だけが出た番組を拝むことができそうだ。
無理に45分かけなくたって、30分でじゅうぶん見ごたえのある話は作れるのだ、とつくづく思わされる。