〈連続ドラマW〉再放送つづく(シネフィルWOWOW)

『黒書院の六兵衛』ほどおもしろくはないのでちょいちょい1.3倍速で早送りしながらだが、録画をチェック。


『誘拐』(監督:小林義則)
五十嵐貴久の原作は未読。
韓国大統領来日を控えた夏。歴史的な日韓友好条約締結を前に、警察が全勢力を挙げて大統領警護にあたるその裏で事件は起きる。現職総理大臣の孫娘が誘拐されるという前代未聞の事件。
制作年2009年ということで、刑事役の西島秀俊がワカ~イ! 翌年の2010年、〈連続ドラマW〉の傑作『蛇のひと』で主演して、見事にはまった。役者として飛躍したかったらWOWOWNHKにせっせと出るのがよい模様。
トリックはずいぶん前から時どき使われたもので、近年ふえている株価操作ネタと組み合わせたところに新鮮味がある。11年前の作品に「新型インフルエンザ」という台詞が出てきてドッキリ。当時はさんざんニュースになったのに、すっかり忘れていた。他にもいろいろ大きな事件が記憶から零れ落ちているにちがいない。
社会派の名に恥じない落ち着きのある演出に、ほどよいBGM。水準以上の出来ではあるが、浅はかな少女の正義感が巻き起こす騒動の話でもあり、とても素直に感情移入はできなかった。
西洋の社会には長らく、大人の社交場に子供を出さないとか公的なことに子供の口出しを許さないという良識があった。それが近年は日本以上にけじめがなくなってきたようで、このドラマのリメイクがあちらで作られる可能性がないこともない。

『死刑基準』(監督:水谷俊之
司法試験に合格しながら大学法学部の講師となった水戸裕介、死刑廃止論者の弁護士・大伴浩二郎、検事の永瀬麻梨子。3人は共に司法を学び、それぞれ死刑に対する考えを持っていた。ある日大伴の妻が殺害され、彼に恨みを持つ鯖江申三が逮捕される。
日本でリーガルサスペンスをこなせそうなのは古沢良太くらいのもので、他の人では情緒の垂れ流しだけのぐだぐだの話になると思っていた。加茂隆康の原作(未読)がよいためかもしれないが、田辺満の脚本は廃止論者、存続論者双方の意見も感情も、予想に反してバランスよく描ききった。ベテランの狩田弁護士(光石研は好演)の存在が後半の重しになっていたのもよかった。
三戸の「被害者の命を奪われたら、加害者の命を差し出す以外に道がない、と考える人"も"います」という発言は、存続派の発想の端的な要約であろう。