『大杉探偵事務所~美しき標的編』

予想以上に愉快なメタ・ドラマ。スタッフがMOZU本編、刑事ドラマ、ハードボイルド、芸能界などの素材で好き放題遊んでいた。ゴールデンにこんな自由がまだあるのかとちょっぴり驚いたり、TBSはドラマに愛があるのだなと思ったり。脚本担当の仁志光佑は――本人の意志に反して――シリアスよりコメディのほうが向いているのではないか。演出の羽住英一郎は本来シリアス向きの人だと思うが、今回は適度に軽快な演出だった。MOZU本編と同じく画面に奥行きが感じられ、しかしスピンオフの内容にふさわしく本編とは違う温かみと明るさにほっとできる。台詞なしでもおかしかったのが、鳴宮が自転車でパトカーを先導してくる場面と、かっこつけたかなえがライターの火が大きすぎてびびる場面。極私的にかなり好みだった『今夜、宇宙の片隅で』(三谷幸喜作)以来の飯島直子も悪くなかった。

15日の『砕かれた過去編』はシリアス風味で魅せてくれるのだろうか。早見あかりや最近多彩な顔を見せてくれる桐谷健太の演技も楽しみだ。