『花燃ゆ』第1回『人むすぶ妹』
番宣でさんざん「『風林火山』が好きな奴は見るんじゃねーぞ! 見るんじゃねーぞ!」と念を押していたので、川井憲次の音楽を聴き、一部キャストの顔を見るためだけにチェック。ひとことで言えば、そんなにばかみたいな話ではなかった。
ここ数年の大河が、高品質があたりまえだったころと違うのが、台詞の絶対量が少なく質的にも幼稚なところ(『八重の桜』前半をのぞく)だ。初回は孟子の引用が多いのをさっぴいても、なかなか大河らしかった。松陰が学ぶことの意義を知るくだりには、スタッフの熱意というか誠意らしきものがうかがわれた。……だったら、なんで「幕末男子の育て方」なんてPRをしたのだろう? 初回のカラーを好む層はあのせいではなから避けてしまうではないか。書物の字が立ち上がる場面にかぎっていえば、『光圀伝』もこのスタッフでできるか……と妄想しかけたが、全部を映像化するのは超困難にちがいない。
演出は、大友啓史が若干スローダウンしたような、ほどほどの躍動感とスピードが感じられた。カメラの移動も、若い人が退屈せず、年寄が疲れないペースを良心的に計算した印象。野外の色彩が明るく心地よい。
玉木文之進の平手打ちをちゃんと演出したのは意外だ。なんとか人権団体からクレームが来たという話も聞かないし、最近のドラマ界の自粛は過剰だったということか。
アバンの塾生たちはいつごろ勢ぞろいするのだろう。東出くんや高良くんは、ひょろひょろして見えたが大丈夫か? 高良健吾と伊勢谷友介は、志を持ち民放を避けて一定のブランドイメージを保ってきた役者だが、これまでは意識の高さに芝居の技術が追いつかない部分があった。今回、伊勢谷氏はなかなかよかったので、高良氏が問題。30代で知識人をやらせるなら、まず伊勢谷という傾向は強まっていきそうだ。やたら妹に甘いシーンは女性視聴者狙い?と思わないでもないが、とんがった知性と行動力のある松陰がはまっている。
小田村なんとかの前髪カツラが不快。『天地人』じゃあるまいし。
他のキャストでは、高杉少年とかたせ梨乃のうまさが印象に残った。
全二回で終わった『天地人』の二の舞なるか? あるいは、淡~く期待している通り松陰が死ぬまではこのレベルを保つか? 宮村優子には時代劇の経験があり、大島里美にはない。プロデューサーはあの調子だし、原作なしの無謀な旅は前途多難と覚悟しよう。