今季の連ドラ

『ごめんね青春!』
脚本が宮藤官九郎なので、たとえ途中で中だるみしても完走するつもり。この人の作品は、中年の活躍が主体の『うぬぼれ刑事』が一番好きだが、これは『木更津キャッツアイ』寄りの学園ドラマ。やや耳障りな声のヒロインが男子学生に盗撮疑惑をかけてしばく場面は、『愛のむきだし』のパロディか。日曜9時に放映するにはなにかとお下品だが、けっして人間蔑視に走らないのがクドカンのいいところ。どんな大団円が待っているか楽しみだ。波瑠の魅力がちゃんと生かされますように。

信長協奏曲
自分一人なら絶対近寄らない月9枠だが、家族につきあって視聴。色彩の安っぽさやら「のぶながさま」連呼やら一部の所作ができないキャストやら、時代劇ファンとしては耐え難い要素はあれど、新種のSFと割り切れば、テンポがよく躍動感もあっておもしろい。各登場人物にそれなりの行動原理があり、近年のスイーツ大河に散見される無理くりな行動パターンがない。合戦シーンが多いのも意外な高ポイント。予算の配分はどうなっているのだろう? 初回、アオイホノオ君(柳楽優弥)が健闘していた。あれで暗い色気も加わったら、北村一輝のようになれるかもしれない。フジのカラーに一番なじまないはずの新井浩文が出ているのにもビックリ。目つき悪くて最高だ! 憎たらしく最期を遂げてほしい。小栗旬の皇帝タイプの演技が上手いのは知っていたが、ヘタレ高校生演技も達者で驚く。蜷川師匠が見たら、「安全パイで才能無駄にしやがって」と言うかもしれない、とも思う。

きょうは会社休みます。
綾瀬はるかは好演し、自虐モノローグがおもしろく、犬も含めて青石家が温かい家庭であるのは好もしいが、半分くらいは1.3倍速にせずにはいられない。『昨夜のカレー、明日のパン』でデリケートな演技を見せている仲里依紗が、今作ではガツガツした女を演じている。ずいぶん視聴者受けがいいとかで「ふーん……」という印象。かませ犬玉木宏。作為が鼻につく幼稚ヘタレ系や、女に危害を加えない以外になんの取り柄があるのかわからない草食系ではなく、ふんぞり返った恋愛マスターとして出てきたのは良いように感じたが、2話目にして早くも暗雲が……。大川相手の妙に軟弱な表情を見て、演技プランを疑ってしまった。そのうちパリ千秋めいた芝居をするようになったら、視聴打ち切りの可能性大。

すべてがFになる
同じく森博嗣原作の『カクレカラクリ』を台無しにしてくれたフジだから、壊滅的な出来を予想していた。ハードルが低すぎたのでショックはないが、犀川先生がWindows使ったり、怜悧な女子学生たちがはしゃいだりしちゃあかんやろ。綾野剛犀川にしては色気と湿り気が過剰。抽象性が高い台詞を咀嚼できていないのも残念。だが、『八重の桜』の芝居は絶品だったし、今年は映画『そこのみにて光輝く』との幸福な出会いがあったので、連ドラごときがどうなろうと、彼はたいしたダメージを受けないと思われる。武井咲は『平清盛』ではなかなかよかったのに、現代ものの企画に恵まれない人なのか? 奇をてらわず若々しい魅力をアピールできる役をあげればよいのに。たぶん2話からスルー。BGMが川井憲次っぽいと思ったら、ほんとに川井だった。そういや『スカイ・クロラ』――これは押井守監督が原作をしっかり把握した良作――の音楽も川井だった。このドラマがきっかけで、さらに森博嗣ファンがふえれば、それで十分だ。泣けました感動しました路線を好むゴールデンの視聴者向けに、クールな森ワールドの忠実な実写化は無理。インテリ&上流階級主役のドラマ作りでは、日本はイギリスに遠くおよばない。日本にもやれそうなキャストスタッフがいないこともないが、BSの『ハードナッツ!』組に行ってしまった。地上波で映像化するなら、深夜枠の大人向けアニメが妥当だろう。

『素敵な選TAXI』
今季のイチオシ。脚本担当バカリズムの才気と、60年代風のレトロなOPやBGM、ダンディーでちょっととぼけた竹野内豊とたぶん贅沢な顔ぶれが続くゲストのかけあいをゆったり楽しむドラマ。3話続けて恋愛問題がテーマになるようだが、それ以外のパターンも希望。