『軍師官兵衛』第3回『命の使い道』

「命を粗末に使ってはならんぞ」かんべえのおじいさんは、そう言うと、魚に中って死にました。(嘘です)

中毒の「あたる」を「中る」と書くのは、今日初めて知った。PCのおかげで一つ覚えた。
初恋の女性を殺された官兵衛が、いきなり「戦いくない」とわめいたり、お部屋にこもってメソメソ泣きまくったりせず、敵討ちだぁ!と怒りに燃えるのは、ここ数年の大河ではマシな展開と言えるかもしれない。が、祖父たる者は、自分の命を大事にと言う前に「お前が血気にはやって仕返しに行けば、一族郎党の命を危険にさらすのだぞ」と諭してほしかった。お年寄りのラストシーンを海辺に持ってくるのは、『龍馬伝』以来、大河の伝統になってしまったな。

天地人』の主人公は毎回オンオン泣くのがお仕事だったし、『平清盛』の主人公は長い人生の大半をウジウジすることに費やしていた。今年は、そういう偏りはなさそうなのが安心材料だ。

竹中半兵衛の活躍が、ダイジェスト風の紹介で片付けられた。大河前半の大事な人だから、来週からもうすこし丁寧に扱われるだろうか。これから谷原章介ファンは、日曜夜8時から大河で、10時から『血の轍』で演技を拝めるわけで、さぞ幸せなことだろう。残念ながらどちらも脚本がいまいちだが、『風林』の今川義元の貯金は当分底をつかないと思われる。

今週も信長は、安定の「いらない子」だった。その母、土田御前はさらに謎の存在意義。お濃に弓を射させるのもよくわからない。女性の元気をアピールするのに、いちいち必然性のないアスレチックな場面を作らんでくれ。
信長まわりの場面を削って本編を30分、歴史のお勉強のために『官兵衛紀行』を15分にしてくれたほうが、よほど興味深い45分番組になりそうだ。

「だまらっしゃい」と一喝したくなるような超ド級駄目台詞を書かないかわり、味のある台詞も書かない……前川さんて、オリジナル脚本だとこうなる人なのかぁ(慨嘆)。時専チャンネルで再放送中の『徳川家康』は、主人公の母親ageすぎ、父親sageすぎ、大竹しのぶ初め、苦手な出演者が数名出演、脇役の小芝居が一部目ざわり。とても全面的に受け入れられる大河ではないのだが、小山内美江子の脚本は――『八重の桜』のまともな部分をのぞいて――近年の大河脚本とは格が違うとしか言いようがない。戦がない場面でさえ、画面には人間同士が言葉という刃で切り結ぶ緊迫感が漲っているのだ。

職隆の部屋に置かれた家具調度品や、庭に干した武具などは、見ていておもしろい。昔の大河は、ストーリーはおもしろくても、ときおり「このおうちの家具はどこ?」と言いたくなるセッティングが見られた。

来週は中谷美紀のご尊顔が拝めるのか……。あまりにイタい使い方をされたら、視聴継続が苦しくなる。「女優の使い道」が心配だ。