2016-01-01から1年間の記事一覧

『真田丸』第32回『応酬』

巨星墜つ!の次の回だから失速しても文句は言えないところ、そんなこともなく、『応酬』のサブタイトルに恥じない緊張感のある回だった。過去15年、大河は薄味が当たり前になってしまい、知力を尽くした話し合いや恫喝が拝めるのは『風林火山』と『八重の桜…

『真田丸』第31回『終焉』

信繁が接する世間がぐっと広がりそうな予感で終わった上田編最終回とまったく異なる雰囲気の、秀吉編最終回であった。武田勝頼や北条氏政が戦って美しく散ったような印象を与えたのにひきかえ、秀吉の孤独な最期のなんという無残か。小日向文世の練達の演技…

『シン・ゴジラ』(総監督:庵野秀明、監督・特技監督:樋口真嗣)

ネタバレあり。 後方に坐った子ゴジラがときおりガサガサモソモソするたびに集中力が遮断されたが、それ以外ではどっぷり庵野の映画の世界にひたれた二時間であった。この手の作品を見るときはメタにおもしろがるだけで終わりがちなヒネコビタ映画ファンには…

『百合子さんの絵本~陸軍武官・小野寺夫婦の戦争~』

のっけからなんだが、「小野寺夫婦」って……「小野寺夫妻」ではあかんのか? ここ数年、NHKのプロデューサーとしては一番高品質な作品を連発している訓覇圭が制作統括、2008年に傑作『あの戦争は何だったのか 日米開戦と東条英機』(TBS)を書いた池端俊策が脚…

新旧朝ドラ

オノマチ目当てで見た『カーネーション』がおもしろかったので、その後10作中5作に挑戦。『あまちゃん』はマイベスト、『マッサン』も政春中心の話は楽しんだ。『あさが来た』と『とと姉ちゃん』は三か月以内に視聴打ち切り。 『とと姉ちゃん』は、『マッサ…

『重版出来』第9話

心が「私をヒロインの参考にしても」と申し出るのを、「それはちょっと」と却下する中田がおかしい。でも、街をぞろぞろ歩く今時の女の子たちを眺めてもピンとこない。で、アユを一目見て、無意識に描こうとしていたタイプだと気づく。創作の神が与えたかの…

大河ドラマ『真田丸』プレミアムトークショー(雑な備忘録)

日時:2016年6月5日 午後2:30~3:45会場:ホテル日航熊本、中宴会場『天草』出席者:500名前後(県外からの来訪者が1割前後)講師:新井浩文 と銘打っていたが、新井浩文を中心に(屋敷陽太郎Pと田中正Dにも)女性アナウンサーが大河の話を訊く、という体。…

『重版出来』残りわずか2回!?

原作未読。野木亜紀子の脚色力が抜群である。ほんとうに表現したいものがあって台詞を選び、あるいは作り出しているのが伝わってくる。出版社がらみのお仕事ドラマ、そして質で仕事を選ぶオダギリジョー出演ということで見始めた。今年の民放としてはマイベ…

『真田丸』第19回『恋路』

愛する女に「私は日の本一、幸せなおなごでござりました」と言って死んでほしいと願う秀吉。最終回に向けての最大の興味の一つが、茶々の最後の台詞になった。秀頼に向かって「わらわは日の本一、幸せな母じゃ」と言わせるのか、家臣が家康への恭順を説くの…

『ダウントン・アビー4』第9回『社交界』

イギリスの映画やドラマは、アメリカ人を田舎者あつかいするシーンになるとますます冴えてくる。今回は何度も声をあげて笑ってしまった……にしても、ハロルドの造形はやりすぎではないか? あるいは彼に「イギリスに文句は言わないよ。ぬるい風呂とか、ぬるい…

『真田丸』好調続く

第9回『駆引』鷹に俯瞰させる形で、期間はわずか五ヶ月弱ながら濃密極まりない"天正壬午の乱"の終結を描いた。どれほど昌幸が策を弄しても大大名たちには叶わない。国衆の悲しさゆえのようにも、昌幸自身の思考法に問題があるゆえのようにも感じられるように…

『真田丸』第8回『調略』

久々におふざけシーンが少なく、また"本来の"直江兼続の言動もふくめて大河ファン歴史ファン待望の調略劇が描かれ、少なからぬ視聴者に至福の時が訪れた夜だった。 ちょっと笑えたのは、お仕事内容を勘違いしている脳筋おにいちゃんとしっかり者の梅との会話…

『真田丸』第7回『奪回』

およそ三谷幸喜くらいマチズモからかけ離れたイメージの脚本家もいないし、今年の大河の演出風味は、硬硬軟軟硬軟軟……みたいな感じだが、大名も国衆もおのが勢力範囲を拡大するため生き残るために、優しさなんぞとは無縁のところで知力胆力をつくして戦うド…

『逃げる女』終わる

梨江子が乗った電車がガタンゴトンと走り、エンディングテロップが流れる。このあたりで、本当に作り手が"逃げない"ドラマを見せてもらったとあらためて思い、青空と雲の塩梅が理想的な空の下、浜辺に立つ二人の女の後ろ姿を見て、黒崎Dは映画に負けないもの…

『ダウントン・アビー4』第4回『ロンドンの一夜』

大邸宅"ダウントン・アビー"を舞台に繰り広げられる群像劇も早や第四シーズン。巷で言われるほど格調高いお話ばかりではなく下世話なネタが多かったのだが、今シーズンはかなりどぎつい展開になってきた。とりあえず、グリーンをヤツメウナギの沼に放り込み…

『真田丸』第4回『挑戦』

噛みごたえのあるダイアローグ! 今回はこれに尽きる。昌幸が織田にはったりかますつもりで書いたインチキ手紙の真相を、三方ヶ原で蹴散らした相手、家康が暴こうとする。重厚なムードの有無はさておき、狸親父の化かし合いの内容は『太平記』レベルだった。…

『ちかえもん』第3回『放蕩息子徳兵衛』

画面がにぎやかで目に楽しく遊び心のあるBGMが耳に楽しいドラマだ。磯部磯兵衛が漫画よりもそっと能動的で文才のある五十男になったらかくや、と思わせるちかえもん。彼が頭のなかで、ああでもないこうでもないと創作世界をいじくりまわす場面が愉快だ。アニ…

『真田丸』第3回『策略』

脚本家が書きたくて書いている題材だから大きな不安はなかったが、コメディパートの悪乗りや過度な現代風味だけは勘弁してほしいと思っていた。意外なことに、極太陰険大河『草燃える』(再放送録画視聴)でさえ、北条政子の妹たちが「お姉さまってば、聞い…

『フラジャイル』

ひどくつまらないわけではないのだが、"長瀬ドラマに外れなし"の文言が当てはまるほどおもしろくもないので、2話で脱落。 第1話は30分につき1事件(?)解決するスピード感重視、第2話ではじっくり1時間かけて一つの症例を解明。しゃべってる役者にもテレビの前…

『逃げる女』第3回『壊れたままの幸福』

慣れ合いがない、台詞や涙に頼るくどい説明がない、人と人とが近づく時には緊張感があり、二者の間には安易に越えられないラインがある。 公式HPではサスペンスと銘打っているようだが、自分にとっては久々のハードボイルドの佳作だ。鎌田敏夫の過去の連ドラ…

『真田丸』第1回『船出』

にやけちゃだめだ、にやけちゃだめだ、にやけちゃだめだ…… 『花燃ゆ』でさえ初回には光るところがあったし、『軍師官兵衛』だって7回くらいまではそこそこおもしろかった。終盤失速した『八重の桜』も初回は重厚かつ繊細で、ついに本格大河完全復活かと思わ…

正月時代劇 『吉原裏同心~新春吉原の大火~』

近年の正月時代劇では、主演のうまさと作品のまとまり具合で『御鑓拝借~酔いどれ小籐次留書~』(2013年、竹中直人主演)が一番印象に残る。 今作は、行方不明の女たちを探索する過程がすっとばされ気味なのと、CGが発達したからこその焼け跡現場再現にして…