『花燃ゆ』第5回『志の果て』
禁門の変まで視聴中断しようかと思っていたところ、チャンバラシーンがあるらしいと聞き、また井川遥の美貌が拝めそうだしということで、だらだらとまたも視聴した。
桂小五郎の剣術の腕にふれたドラマは珍しい……にしても、あまりにもあっけない立ち回りであった。ともあれ、江戸の空気感をまとって登場する東山氏はさすが。小田村の中の人が見劣りすることこの上ない。強引に西郷どんも出てきた。西郷役に肉布団を着せるへんな習慣がすたれたのは結構なことだが、そのぶん役者が演技で人間的厚みを出さねばならず、宅間氏には荷が重そうだ。『新撰組血風録』で近藤勇を演じた時もちょっと軽かったからなぁ。料亭の室内シーンは、照明撮影には落ち着きがあって好感が持てる。グリーンがかった色調なのがおもしろかった。
ボタンは衣服を留めるものであり、金子にとっては自分と志をつなぐようなものであり、それを人をつなぐ使命を帯びた文が手に入れるって、ああこれから何度もこのパターンかと思わされる。
息子の遺体を引き取って帰る金子の母は、文に言い放つ。
「あれ(ボタン)は捨てました。この骸は染物屋の息子でございます」
まさに場面をさらう麻生祐未の見事な芝居。『阿部一族』以来、時代劇ではつねにすぐれた存在感を見せている。厳格な武家の母上も甘い母上も上手だったが、今回はなぜ庶民の息子がこんな生き方死に方をせねばならなかったのか、悲嘆にくれるだけでなく、勝手なおさむらいさんの妹に対して意地を見せる母親を演じきった。
金子母の次に印象的だったのが、「生きて、腐って、呪え」となんとも穏やかでない言葉を連発する富永有隣。くれぐれも、松陰や文にほだされて柔和なおじさんに変身しませんように。
高邁な思想に生きる人間のために、多くの名もなき人々が犠牲になる構図を見せたのは、「幕末男子の育て方」というなんとか丸出しの宣伝文句からすれば予想外の拾い物。そんでもいくら主人公だからって、無口でおとなしかったはずの文がああいう糾弾に走る演出には少々違和感を持った。
野山獄と杉家の地理的関係がよくわからないんだが、嫁入り前の武家のお嬢さんが独り歩きするにはどうかと思われる土手ぞいに文が帰ってくると、滝が出迎える。この母上の「せわあない」は、朝ドラヒロインの空疎な「ダイジョブー」の次に気味が悪い。エリーさんは、某駐日米国大使に通じる容姿もあいまって無知無邪気無神経な金髪の"励まし"マシーンに見えてしかたがない。いっぽう、滝は思考が停止した新興宗教の教祖の母といったところか。
来週のタイトルは『女囚の秘密』……すごいな、女囚の秘密って。さそりでも出てくんのか? 高須久子は松陰と歌を交わせばいいのであって、文ちゃんの新しいお友達になる展開はなしにしてもらいたい。