ここ2年の連続ドラマ

*国内ドラマ~リアルタイム視聴
2クールに1本か2本見る習慣はあいかわらず。
重版出来!』:圧倒的に印象に残る。一流クリエイターへの敬意、クリエイターを目指すも挫折する者への冷徹だが愛情あるまなざしに心を打たれた。
監獄のお姫さま』:クドカンだから見た。お得意の過去と現在を行ったり来たりの手法で、アラフィフを中心に道を踏み外した女の集団を描いた人情劇。エンドクレジットが流れるたびに、「またスタッフの手のひらで転がされていたな」と脱帽したものだ。このドラマが良かったからと言って、伊勢谷友介をもっと民放連ドラに出そうとする(誰が?)のは間違い。「むやみにテレビに出ないし、基本NHKにしか出ない」スタンスの人がめずらしく民放に出たところがミソなのだから。個人的には、『うぬぼれ刑事』の軽さやばかばかしさの方が好み。
『神の舌を持つ男』:堤幸彦だから見た……で、堤カラーは強く出ているにも関わらず、あのつまらなさはなんぞ? テンポの悪さだけが原因ではなさそうだ。内輪受けに走り過ぎたか。佐藤二朗以外に笑いを作れるキャストがいないのも辛かった。

*国内ドラマ~再放送
逃げるは恥だが役に立つ』:家人につきあって視聴。ど~~もお呼びでない感じだなってことで、第一回終了と同時に離脱。最終回まで見た人々の「恋愛至上主義に疑問を投げかけた佳作」という評価が当たっているのなら、多くの人を救った良作と言えるのだろう。
『カルテット』:あまりにいろんな人から「絶対好みだから見るべき」と言われて視聴。久々に、先の読めない展開つづきで、一気再放送をわりと一気に完走した。四人が偶然知り合ったはずはないだろうと思った以外は、脚本家の手の内が読めないまま最終回まで引きずられていった印象だ。曲者俳優の松田龍平が一番常識的なキャラを担当したところはおもしろい。現代劇の松たか子をいいと思ったのはこれが初めて。椎名林檎の音楽もエンディング映像も都会的でかっこよかった。高橋一生はどちらかと言えば好きな役者だが、こういう売り方ばかりすると役幅が狭まるのではないか。ストーリーはおもしろかったが、「こんな台詞書けちゃう俺♡」みたいな坂元裕二のどや顔が何度も鼻についたので、やはり好きにはなれない脚本家だと再認識。坂元大河だけは実現してほしくない。あと、寿美男じゃないほうの大森大河も。
『アンナチュラル』:今期は何も見る気になれなかったが、『アンナチュラル』を絶賛する意見を目にすること多し。再放送があったらチェックしたい。

NHK
悦ちゃん』:明るく楽しく洒脱な極上エンターテインメント。鬱々とした場面もそれなりにあったが終わり良ければすべて良し。後釜の『アシガール』も健闘。土曜のドラマというと夜8時か9時台の社会派に傑作が多かったけれど、これからは6時台のほうも"明るいドラマ枠"として良作を連発していくのではないか。
夏目漱石の妻』:疲れている時にはとても再見する気になれないが、ずっしり重みのある文人ドラマだった。十年後にも記憶に残りそうだ。

*今期~来年のドラマ
『コンフィデンスJP』が始まると思うとわくわくする。保存したくなる出来でありますように。
朝ドラは鬼門――『あまちゃん』や『てるてる家族』は例外――の思いはぬぐいきれないが、秋に始まる『まんぷく』には興味あり。主演が安藤サクラ、夫役が長谷川博己、演出が安達もじりときたら、コクのある大人のドラマができなきゃ嘘だと言いたくなるが……福田靖が起業の扱いだけでなく男女の人情の機微の扱いも得意な人だといいのだけれど。今期の『半分、青い』はスルー。佐藤健が重要な役でしかもNHK。だがしかし昨年、脚本家の名前を聞いた時点で、"not for me"のフォルダーに入れてしまった。
最大の楽しみは次期大河『いだてん』。来年再来年とビッグイベント続きだが、『いだてん』を含めて幸福な記憶が残ることを願うばかりである。


*しつこいおまけ:海外ドラマ
あいかわらずイギリス以北のヨーロッパのドラマが好みだ。
『トラップ 凍える死体』:嵐に閉ざされた小さな港町に身元不明の惨殺死体が漂着する……アイスランド本格ミステリ。誰もが顔見知りの狭い港町で、次々と住民の秘密が暴かれていく。事件を解決した刑事は、身内から恨まれる。やたらと寒そうなおかげで、温帯が舞台だったら臭ってきそうな死体もそう感じさせない。ノルディック・ノワールのつねで、国際的な人身売買組織が暗躍するものの、今作では少女たちの未来に一筋の光明がさす。
ダウントン・アビー』:最終回はずいぶんと盛りだくさんだったが、無理な駆け足とは感じさせず。権威や富を悪にしたがる本邦映像作家にはなかなか作れない、"貴族の言い分"込みのイギリス流大河ドラマであった。
『ヒンターランド』:ウェールズ発。話が辛気臭いし美男美女は出てこないし、つねに眉間にしわを寄せた主人公はベテラン刑事にあるまじき公私混同をやらかすし……なのに、地味におもしろい。荒涼たる風景に疑心暗鬼の人間関係においしくなさそうな食べ物。日本でぬくぬくしながらこういうドラマを見物するのはいいが、間違ってもあちらの国で暮らしたいとは思わない。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』:WOWOWで放送したのを、シネフィルWOWOWで再放送。偶然にもBSプレミアムでは吹き替え版を放送中。日本の声優はひじょうにハイレベルだが、イギリスものは字幕版が好み。吹き替え版だと威圧的なキャリア官僚の声が太くて威圧的にされがちだ。が、ソフトな口調でいけずなことを言うところがイギリス流のお芝居のおつな味なので、そこは聞き逃したくない。『主任警部モース』は英国でたいへんな高視聴率を叩き出し内容的な評価も高いそうだが、そのスピンオフ『ルイス警部』も今回の『刑事モース』もまったくレベルダウンしていない。孤立感を味わうインテリと庶民派のコンビとか、同一犯と思われた二つの事件がまったく関係のない犯罪だったとか、オックスフォードの美しい街並みを生かすとか、『主任警部モース』を踏襲しながらも、マンネリ感はゼロである。警部になってからのモースは押しが強く人遣いが荒い上司で、そこがかっこよくもあったのだが、新米時代のモースはシャイでガラス細工のごとく繊細である。一見保身に汲々としているかのような貧相な警視がモースの危機を救ったり、だらしない州警察を一喝したり、意外性で魅せる。『刑事モース』に出てくる新聞記者役のアビゲイル・ソウが、本家モースを演じたジョン・ソウの娘と知ってびっくり。言われてみれば彫りの深さも立派な鼻もそっくりだ。何度も意味ありげにフリーメイソンが出てきたが、今後も消えた証拠品が回収されたりはしないのだろうな。『主任警部』なんて犯人がつかまらないまま終わった回もあるんだし。
『ハウス・オブ・カード』:主演男優がやらかしたので、あとは彼抜きで制作されるとのこと。第一シーズンでたまげたのが、主人公が教会のキリスト像に唾を吐きかける場面。こんな場面を入れるからには、彼が碌な末路を辿らないことは制作側が決めているのだろうと思っていたが、新シーズンは「フランシスは○○で死亡」とかいう強引なテロプとともに幕を開けるのだろうか? ロビン・ライトは大統領でも国防長官でも嵌りそうだから、彼女だけで画面がもたないという心配はなさそう。
ゲーム・オブ・スローンズ』:とてつもない傑作らしいのだが、これに手を出すと生活が破壊されそうで二の足を踏んでしまう……。

 

『どこにもない国』後編

山田純大が日系アメリカ人将校の役で出演。骨太の役者なので、BSあたりで準主役くらいはやっていただきたいものだ。「排日移民法と戦った方ですね?」。丸山氏の同胞愛や反骨精神を表す重要なエピソードなのだが……もともとこの法律になじみがある視聴者にしか響かなかったようでなんとも残念。

引揚船が出ると決まって男泣きに泣く三人組。役者の涙は安売りしないで、こういう設定にこそ使うべきなのだ。

丸山と新甫は吉田総理に直談判する。言葉で戦う丸山と、肉体を痛めつけられる武蔵が交互に映り、川井憲次のシャープなBGMが流れて緊張感を醸し出す。
"どこにもない国"に、満州の日本人が国を失ったのはもちろん、総理大臣にとっても表だって活躍できる国がどこにもない、という二重の意味を持たせたのところはさすが大森寿美男
老政治家をやり込めたつもりの丸山に、吉田は背中を向けて語り出す。「ここからは吉田個人の言葉だ。GHQはとっくにソ連と交渉していたよ。マッカーサーにとっても、あんたらの出現は都合が良かったんだ。ソ連の好きにはさせない、そういう機運を高められた。心配しなさんな。いずれGHQは操り人形にすると言ったはずだ。しかし君はよくしゃべるねぇ」。晩年の原田芳雄もそうだったが、アウトロー俳優だったショーケンが、総理大臣をやるとはねぇ……しかしショーケン、含み綿入れ過ぎ!
柴田恭兵はこんなにいいナレーターだったのかと思わされるドラマだったが、ここでのナレーションも印象深い。
――吉田はすでに大連などからの引き上げに関し、マッカーサー宛てに英語で書簡を書き送っていた。これより具体的な交渉に乗り出していくのであった。
面会終了時刻になったので呼び鈴に手を伸ばして、まあ少しは待ってやろうという大物政治家の余裕っぷり。吉田や佐藤栄作の尽力については説明台詞に頼らない演出で見たかったのだが、それこそ時間の制約があるから仕方がない。

武蔵釈放の場面。スパイ容疑が晴れたのは、事前に国民軍の将校に渡りを付けておいたから、という背景説明は、やはり時間切れで無理だったか。あるいは撮ったけど、やむなくカット?

一流スポーツマンとノーベル賞受賞者以外の同胞をなかなか褒めないのが日本のメディアだ。今回の、丸山邦男、新甫八朗、武蔵正道の知力、胆力、偉業を周知しようという姿勢はすばらしい。
NHKのことだから、立て替えた活動費のその後についてネチネチ語るかと思いきや、そこはスルーで意外。ヤルタ直後から、アメリカ上層部では満州がどういうことになるかわかっていたはず。米側が"温情"だけで引揚船を出したわけではないことは吉田の口から語らせたから単純なドラマにならなくてよかったが、それにしてもアメさんのやることはとんだマッチポンプとしか思えない。

内野聖陽はちょんまげのっける仕事ならなんの心配もないけれど、昭和ドラマだとどうかな……というのは杞憂であった。長台詞が時々舞台じみるところはあっても、オーバーアクトではない誠意のにじみ出る熱っぽいお芝居を見せてくれた。蓮佛美沙子はせっかく昭和顔なのに(?)ちょっと未来人ぽいふるまいをする場面があったりして、(脚本の設定が)期待外れ。この手のドラマに出てくるアメリカ人キャストがいつも代り映えしないのは、なんとかしてほしい。下手ではないけれど、「またこの人!」みたいなのが続くと少々興がさめる。

経世済民の男シリーズはもうやらないのかな? 大森脚本、内野主演で『渋沢栄一』とか、無理かなぁ~。

 

『真夜中のスーパーカー』

2000GTが爆走するドラマ」を作ろう……見境もなく、そう決心しました。(大橋守D)

NHK地域ドラマ(今回は愛知発地域ドラマ)は拾い物が多いし、たぶんおもしろそう、山本美月の初主演作だし……くらいの気持ちで視聴。だが期待以上の、人をわくわくさせる夢のあるドラマだった。久々の永久保存決定。いつの日か、トヨタ博物館に行ってみたい。
近年のテレビは鉄オタへのサービスに余念がなく、カーキチ(死語?)の皆さんは置いてきぼりの気分を味わっていたかもしれない。本作は自動車が主役といってもいいホームラン級単発ドラマである。

世界最大手の自動車メーカーに勤める白雪は、デザイナーの夢破れ、転勤の前日に自動車博物館でナゴヤ2000GTのデッサンに熱中する。警備員の「早く帰れ」に従わなかった彼女は、日系ブラジル人四世のリカルドとともに、ナイトミュージアムに幽閉される。2000GTの運転席に忽然と現れる白いレーシングスーツの男。怪しげな男女の群れ……。

戦艦大和のカレイライス』(広島発地域ドラマ)も大橋Dと脚本家、會川昇――アイカワショウ!? ――のコンビによるドラマだが、『スーパーカー』のほうが数段上のエンターテインメントだ。前作はNHK的な臭みが鼻についたが、今回はそれもなし。戦闘機を設計した人々が名車誕生に貢献する流れにも、嫌味がない。
會川氏はアニメや子ども向けのヒーローものを主戦場としているとのこと。その経験が大人も子供も楽しめる今作に最大限生かされている。多くのドラマが、登場人物の心情を説明するために風景や小道具を利用する。しかし『スポーツカー』は、名車のパーツのメカニックな美しさ、疾走するスポーツカーのかっこよさそのものを前面に押し出している。女優ライト(?)を浴びた車の綺麗なこと! プロのレーサーによるレースシーンなど、ずいぶん贅沢なものを見せてもらった。

実際に自動車業界で活躍した方なのだろうと思わせる高齢男性が出演していた。2000GT開発チームの一員で、レジェンド・テストドライバーと謳われる細谷四方洋(しほみ)という方らしい。
アニソンのスター、水木一郎も演技と主題歌の両方で活躍している。

エンディングで紹介されるイラストの数々も目に楽しかった。

BS放送のみではもったいない。これはぜひ総合でも放送していただきたい。
車好きの大人だけでなく、夢を持ちにくいと感じているティーンエイジャーやら仕事に行き詰っている若者やら、ファンタジックな実写作品に飢えている人々やら、アニソンファンやら、いろいろな視聴者の心にヒットすること間違いなし! メイキングつきDVDを作ったらいい商売になりそうだなぁ。

『どこにもない国』前編

クドカン古沢良太と並び、「この人のドラマなら見てみようか」と思わせる脚本家が大森寿美男だ。この一月まで長きにわたって放送された『精霊の守り人』は大森氏が脚色担当だったが、ファンタジーというジャンルそのものに興味が持てないので、樋口真嗣が演出担当した戦闘シーン以外はあまり興味を惹かれずじまい。海外輸出を想定した、良心的な意欲作ではあると感じた。

今作の原案は『満州 奇跡の脱出』(ポール・邦昭・マルヤマ著、柏櫓舎)。力作ながら、アメリカ人のなかでも特に祖国への忠誠心が強い元空軍大尉ならではの偏りも皆無ではなかった。"原作"ではなく"原案"なのだから、ドラマが『満州』と違うこと自体に問題はないものの、新甫の造形がちょいちょいいかにもNHK的未来人なのは興ざめ。「ユートピアは心の中にある」は大森オリジナルのいい台詞。

音楽が川井憲次とは嬉しい! この人選だけでもウェットな演出を狙っていないと信じられる。
丸山が二度に渡って捕らわれるくだりは、『満州』を読んでいなければもっとハラハラできたかもしれない。だが彼は、有力者に書いてもらった文書――プラス、妻から贈られたロザリオ――に救われる。誠意だけでなく、金や人脈や交渉や大国で力を持つ宗教の利用価値をきちんと描くところは大人のドラマだ。

ポール・マルヤマの母は生涯「ロシア人だけは許せない」と言っていたそうだ。ロシア兵の蛮行は日本のドラマにしては描写していたほうか。共産圏に関することは少しでもネガティブに言ってはいけない、みたいな時代のNHKを記憶している身としては隔世の感がある。○十年ほど前、満州からの引き上げ組である老人から「中国人はロシア兵を『ターピーズ(大鼻)』と呼んで嫌っていた。ターピーズの敵だからと、日本人を助けてくれる中国人は少なくなかった」と聞かされた。ドラマでは丸山を追う兵たちの行く手を大八車が阻んだように見えるシーンがあったが……NHK的には日本人は嫌われてたことにしないとまずいので、偶然車が通りかかっただけということか。

木村隆文氏は『坂の上の雲』、『真田丸』の演出家とな。緊張感、俯瞰的な視点、志のいずれにおいても、少しでも戦争が絡むドラマで『坂の上』を超える作品作りは至難の業のようだ。
後編は日本の政治家disに走るのかと危惧したが、予告を見る限り、どうやら吉田茂の尽力はスルーされずにすみそうだ。丸山が家族と再会を果たすまで(?)のあれこれを、75分でどう配分するかが見ものである。武蔵の拷問監禁シーンの比率によって後味がかなり変わってくるだろう。

ぴんぼけニュース語り

*国内ニュース
『プライムニュース』(BSフジ)は先週あたりから、以前にも増して興味深いテーマを連続して取り上げている。北朝鮮問題、働き方改革、有人探査のあらたな焦点、第4次産業革命を生き抜く方法云々。とりわけ宇宙開発の回は、向井千秋若田光一油井亀美也3氏のお話がおもしろかった。皆さんいい顔をしていらっしゃる。火星への渡航の際は月面の水と氷から(水素と酸素を分離して)燃料を生成すればよい。宇宙で使う長期滞在用施設の開発は、地上で利用可能な施設の開発にもつながる。月面の砂を月面建設の資材に利用する際に既存の建設技術を応用できる、この分野は日本が強い。傾聴に値する、具体的かつ肯定的な意見がさまざま開陳され、日本にもまだ活路はありそうだと感じることができた。
この番組は、ゲストから専門家としての意見を訊き出し、かつ踏み込んだ質問をする反町キャスターの存在なくして成り立たないのだが、なんと同氏が4月から『プライムニュースイブニング』(PM4:50~)なる地上波フジTVに移ってしまうとか。失礼ながら、Eテレを除いてそんな時間に放映する地上波の番組に、録画してまで視聴する価値があるとは思えず。また、肝心の『プライムニュース』の質が維持されるのかもひじょうに心配である。宮内社長の意図はどこにあるのやら……。

*海外ニュース
BBCが母子ケアシステムについてミニ特集を組んだ。以下、ザル頭に残った範囲で覚書。ヨーロッパのニュースはしばしば旧植民地に触れるのだが、今回はインドの新生児の栄養状態の悪さや医療制度の不備とともに、マラウィ(1964年独立、現在は英連邦加盟国)の母子健診導入の試みを紹介していた。さらに、日本はなぜ世界で唯一、”新生児の死亡が1000人に1人未満”を達成したのかを取材。母子手帳の配布、産婦および乳児誕生後の母子の定期健診という取り組みが功を奏しているようだ、という結論だった。日本の産科医療従事者の技術力(と過酷な勤務状況)にも触れてほしかったが……現状では日本の母子ケアが世界一であることは間違いない。


ユニセフの関連記事↓
https://www.unicef.or.jp/news/2018/0023.html
カナダの関連ネット記事↓
http://www.cbc.ca/news/thenational/national-today-newsletter-school-shooting-infant-mortality-1.4543496
("Births, and too many deaths"以下)

途上国での新生児の死亡の8割は、早産、栄養失調、先進国なら治療が容易な病気が原因とされる。全死亡の過半数を占める10ヶ国には、件のインド、マラウィが名を連ねる。旧植民地からあいかわらず収奪するとともに少しは援助もしてきたイギリスでは、「なんとかすべし」の声が上がるのではないか。
最近は随分とけっこうな国のように伝えられるカナダは、乳幼児の栄養状態に関して豊かな41か国のなかで第37位。子供の18%が貧困状態にあり、先住民の子となるとそれが51%に達する。
つねづね、新生児の死亡率の高さと妊婦経産婦の不平不満の多さは反比例するのではないかと邪推してきたが、日本に次いで子が育ちやすい北欧やシンガポールの女性がぐだぐだ言ってる系の話は聞いたことがない。メディアの産科医叩きも日本が突出しているのだろうか。

ABCは連日、銃乱射事件のその後を報道。娘を殺されたある男性が息子達とともに連日カメラの前で発言している。見たとこいかにも成功したビジネスマン風だ。「政府はいいかげん規制に乗り出すべき」と主張する彼は、強気ではあるがヒステリックではなく、背広の襟には星条旗をかたどったピンバッジをつけている。政府に抗議する人のタイプの彼我の違いを感じる。

 

『西郷どん』を二話まで見て

原作未読だが、林真理子の他の時代小説は数冊読んだことがある。いずれもNHKのお偉方にウケそうな主婦の視点だのリベラル仕草だのとは無縁の、時代背景を尊重した筆致であるのと、主人公をかなり突き放した視点で見ているのとが印象に残っている。第一話のジェンダーネタは99%原作とは関係なさそうだ。あれは上層部のお達しなのか? Pがでねじこんだのか? 脚本家の趣味なのか?

脚色担当の中園女史のプロフィールを調べたところ、『トットてれび』以外は自分が避けて通ってきたタイプのお話ばかり書いていた御仁らしい。『西郷どん』は今のところ、ドラマとしては成立していると思うが、大河ドラマとしてはなんともお手軽な印象がぬぐえない。斉彬がなぜか吉之助とばったり会って「めそめそするな。強くなれ」と言ったのはよいとして、吉之助が「弱い者のため」を連呼するのってどうなのか? あの時代なら「薩摩のため」、「お殿様のため」じゃないのか? 47回を通じて一度も「国のため」が出てこなさそうな悪い予感がありすぎる。

吉之助はお腹を空かせてる弟妹のために持って帰るべき銭を、よその娘を助けるために使ってしまい、そのうえ最終的には救出計画は失敗に終わる。この手の半端な親切はかえって人の恨みを買うものだが、ふきは「立派なお侍さん」などと感謝の言葉を述べる。内容がない脚本と言われた『龍馬伝』でさえ、初期には親切にされる人間が募らせる劣等感のような人情の機微を描いていたものだが、今年はまったく望めないのだろうか。

史実では吉之助の直属の上司は立派な人だったようだが、第二話の視聴者は、絵に描いたようなわかりやすい小悪党を見せられた。

平清盛』の反省なのか、ただ南国の明るさを出したいからなのかわからないが、陽射しの映し方が明るすぎて逆に疲れる。
だらだら子供時代を引き延ばさなかったのはよかった。

なぜこんな食指が動かない大河をわざわざ見るかと言えば、三十代の"時代劇の星"高橋光臣が出ているからだ。意外にもピン・クレジットで出番が多そうだが……今の脚本、演出だとリアルで見るのはきついので、来週から録画して早送りで飛ばしながら見ることに決めた。

あんな浅い造形の主人公なのに、まったく浮つかないしっかりした芝居をする鈴木亮平は立派な役者さんだ。黒木華も古風な日本女性になっている。二人とも『天皇の料理番』のメインキャストだったか。
こういう人たちには大森寿美男あたりの脚本で大河デビューしてほしかった。鈴木氏は土曜の夜に大森脚本ドラマに出ているので、まだラッキーな方? 三谷幸喜が二度目の登板を果たしたのだから大森氏も! と期待していたのに、朝ドラ担当が決まったそうで、大河はまた遠のいてしまったようだ。

時代劇専門チャンネル制作作品3本視聴

藤沢周平新ドラマシリーズ第二弾『橋ものがたり』
『小さな橋で』
演出は杉田成道とのこと。何も藤沢原作を使って『北の国から』をやらなくてもいいのに。子役はうまい人なのだろうが、ず~~っとナレーションが続くこと自体より、現代っ子の自意識を感じさせる語り口がどうにも受け付けなかった。大人たちの芝居にもあまり感心せず。

『小ぬか雨』
つい数年前にも『小ぬか雨』の脚色を見たような気がするのだが記憶違いなのか……と思ったら、BSプレミアムの傑作時代劇『神谷玄次郎捕物控2』で神谷が絡む話として流用(?)されていた。今作は、井上昭Dの演出の間合い、北乃きいのはりつめた表情のどちらも素晴らしく、余韻が残る寡作である。北乃さんには、また時代劇で町娘を演じてもらいたい。

池波正太郎時代劇スペシャル『雨の首ふり坂』
J:COMプレミアチャンネルで放送ということ以外、情報を仕入れずに見たおかげでサプライズがいくつもあり、正月早々得をした気分である。
のっけから白須賀の源七の後ろ姿が出てきて画面が揺らぎ、渋い和風イラストに。EGO-WRAPPINのBGM、そして「脚本:大森寿美男」のテロップという嬉しいトリプルパンチ。原作未読なので、どこからどこまでが大森氏の功績なのかはわからない。そしてハードボイルドなムードを高める低音のナレーション。エンドクレジットで、極私的には今日本で一番魅力的な声優である津嘉山正種だったと知る。まだ現役だったのか!

やや速めなテンポ。障子に映る紅葉のシルエットの美しさ。とりわけ黒と橙の色合いが、オノ・ナツメの漫画『さらい屋 五葉』を彷彿させる。夕暮れ時のたき火と川辺の景色が忘れがたい。
流水を隔てて景色を撮ったみたいな画面が何度か出てきた。河毛俊作Dが狙った「フレンチ・ノワールのような雰囲気づくり」の一環だろうか。
女郎屋の女将の台詞がやや説明過多だったのが惜しい。

「○○さんですね、仁義は省きます」は、ろくでなしらしい(かっこいい)挨拶。
近頃のドラマにはめずらしい血しぶきやら片腕やらが飛ぶ殺陣。それから「こうして身重のおふみを捨てた源七は、半蔵とも別れ、二十五年の歳月が流れた」のナレーションであっさり四半世紀を飛ばすそっけなさ。

源七は万次郎の更生を心から願う。「ここにほっぽってくれりゃぁいい。おめえはもう堅気だ。こんなろくでもねえ生き方してるとなぁ、この歳になってやあっと見えてくるもんもあるんだよ」「俺みたいな人の返り血浴びて腐りきった体になっちまうと、どうにもならねえや。お前は違う」「もしかしたらもっと別の生き方もあったんじゃねえかってな。お前にはまだ流れてんだよ、人の血がな」

万次郎は、病に倒れた源七を見捨てず、うどん屋の茂兵衛に助けを求める。

おそらく辛酸をなめ尽くしてきた茂兵衛。この親父のぼそぼそした語りが実にいい。「そう死に急ぐこたぁねえよ。葬式の日はかならず来んだからよ」「昔はさんざん俺も人を苦しめたんだ。人の道ってのはよ、どこでどうなるかわかりゃしねぇんだよ。あんただってよ、まだ間に合うぜ」「食べないで死ぬより、食べて地獄に落ちる方が悔いがねえだろう」
人生で二度目の堅気からの親切を受け、源七は生まれ変わる。

行田の甚五郎は幼児を助ける気になってからも、べたな笑顔を浮かべたりしないところがいいな。

恩人の墓前での「茂兵衛さん、俺は死んでもあんたのひ孫とお千代坊を守るぜ」は、いわゆる死亡フラグか。

人生最後の果たし合い。源七の外套の脱ぎ方がイマイチ。
この時の藪塚の半蔵の行動が意表を突く。「人間は善だけではない、悪だけでもない」とする池波らしい造形。
老いたりといえ腕は衰えない源七、半蔵コンビは瞬く間に竹原一家の子分どもを片づける。
残るは客人扱いの刺客、橋羽の万次郎。
「あんたと差しで勝負がしてみたい」
母が甚五郎に託し、甚五郎から渡された小判みっちり巾着のおかげで、万次郎は命拾いし、源七を斬る。
そして、かっこよく歩み去る。

「あいつは強えなあ。昔の俺らでも斬られてただろうな」
「おい見ねぇ、昔のお前そっくりだぜ」
「笑わせるなよ」
泣きに持って行かない主人公の退場場面が粋である。因果は巡るという言葉も浮かぶ。

盤石の梅雀と予想以上にはまっていた大杉連。いつも以上に名バイプレイヤーぶりを発揮していた泉谷しげる小市慢太郎。ベテラン勢の芸を楽しめるのはもちろん嬉しいが、若手の鍛錬の場にもなっているのが、今作のよいところ。中尾明慶は登場時、芝居も立ち回りももうちょいかなと思ったが、それが役回りに合っていた。馬場徹は『MOZU』に出ていたのか! これから時代劇や刑事もので活躍しそうだ。三浦貴大は前から古風な持ち味が魅力的だったが、今回は締めのシーンにふさわしい存在感を発揮。どんどんチャンバラ物に出ていただきたい。