今年の海外ドラマ

不覚にも北欧の作品をチェックしそこなった。鳥頭ゆえ、直近のものから覚えている範囲でさかのぼって列挙を試みる。

『無実はさいなむ』(2018年BBC)
不安をあおるカメラワーク、達者な俳優陣、(たぶん)原作からの巧みな逸脱。登場人物の過半数がいやな奴なうえにラストも"ややすっきり"したかに見せかけて、エンドクレジットのあいまに本当の怖~い結末を挟む。ビル・ナイがただのいい人を演じるわけがないとは思ったが、控えめな演技ながら回を追うにしたがって腐った男の内面が伝わってきてさすがである。
次々と良作ミステリが出版され、それを実写化することが可能な現在、あえてクリスティの再々ドラマ化をやるからには、露骨な描写は避ける彼女の特徴は維持してほしかった。

『サバイバー 宿命の大統領』(2016年Netflix
米国国会議事堂に爆破テロがしかけられ、大統領をはじめとする閣僚、議員がほとんど死亡する。指定生存者に当たっていたためテロを免れたカー久マン住宅都市開発長官が大統領に指名される。主人公が特別補佐官エミリーといっしょになって延々お花畑ごっこをやられてはかなわんと思ったが、さいわい4話にして食えない政治家に成長。カークマンのライバル、フックストラテン共和党議員もなかなかしたたかで魅力的。『ハウス・オブ・カード』の軍人出身の女性議員などを見ても思うが、地に足がついたタフな女性議員の描き方では彼我に差がありすぎる。

『レジデント 型破りな天才研修医』(2018年FOX)
このドラマだけは日本の民放でもできそうだと思った。ただ、最後の最後に"金と力は使いよう"を示すところは日本のテレビ制作者にはちょっと無理かなぁ。敵役のベルの仕草がときどき渡部篤郎を彷彿させる。わが身に危険が迫るや躊躇なく愛人を切り捨てるあたり、あちらの人間関係勘はシビアであります。だらだらセカンドシーズンまで引っ張るかと危惧したが、無理なく全14回でまとまって安心した。

『アート・オブ・クライム』(2017年France 2)
めずらしくフランス・ドラマを視聴。絵画の蘊蓄あれこれはおもしろかったが、やはりフランスもののにおいは肌に合わないと実感。ヒロインの甘ったれた感じが悪い意味で日本女性っぽいところもあまり好きになれなかった。

『ミニチュア作家』(2017年BBC
ジェシー・バートンの原作はベストセラーだったらしい。
17世紀のアムステルダム。農家から豪商に嫁いだ若い女性が不気味な一家、謎めいたミニチュア作家との出会いに翻弄され、成長していく。フェルメールの絵を思わせる、とくに黄色と青が美しい画面だけでも一見の価値あり。同性愛者が足に重い岩をくくりつけられ、溺死刑を受ける場面がある。史実かどうかググってもわからず。今のオランダが世界一寛容なLGBT政策を取っているとかいうのは過去の過酷な扱いの反動なわけで、「日本より進んでいる」と崇めるなんざとんだお笑い草である。

シェイクスピア&ハサウェイの事件簿』(2018年BBC
こういう能天気で愉快なテイストのドラマは、今後も一定の割合で作り続けてもらいたい。主役コンビが現実に欧米の町中にあふれている太っちょ体形なのもよいし、ヒロインが気のいいおばちゃんなのも楽しい。

『コード・オブ・キラー DNA型鑑定で犯人を追え!』(2015年NEP)
事実をもとにしたドラマ。警察がなかなか真犯人に迫れずじれったい思いをさせられるが、それだけに第三話での捜査の進展にカタルシスがある。科学の発展に寄与した人々に感謝したい。