『おんな城主直虎』第28回『死の帳面』

"国衆はつらいよ!"と"武士だけでなく坊さんや商人も含めた戦国の風俗"の描写に力を入れている今年の大河。ちょっと受け狙いな感じの"政次カワイソス"パートにはあまり乗れず。うじうじしたしの相手に暴走気味の父性を示した回以外は、主人公にもこれといって魅力を感じず。このところ、人間ドラマとしては龍雲丸のくだりがちょっとおもしろいと思うくらいだった
が、
今回は浅丘ルリ子の独壇場だった! そして、つまらなくはないけれど著しく重厚さに欠けるきらいのあった『直虎』にはめずらしく、彼女と尾上松也のやりとりなど、ひさびさにこれぞ大河ドラマ!と呼びたい趣があった。寿桂尼は『風林火山』の藤村志保がベストと思っていたが、浅丘ルリ子の造形にも同じくらい強いインパクトがある。信玄を「そなた」呼ばわりする脚本はやりすぎでは、とは思ったが。

「なんという思い上がり。私が説き伏せましょう」
「お見苦しや、太守さま。弱音を吐いた者から負けるのです」
これまでの駄目な方の女大河では、まず聞けなかったシビアな台詞の数々がすがすがしい。

直虎に面と向かって「今川をよろしく頼みますぞ」と訴える老いた尼。そう言った舌の根も乾かぬうちに敵認定すれば、『直虎』は水準以上の作品になると思い……まあ、期待は裏切られなかった。
「我に似たおなごは、老いた主家に義理立てなどせぬ」
HPの来週のあらすじによれば「寿桂尼が死の床についていた」。さんざん死ぬ死ぬ詐欺をかまされてきたが、今度は本物らしい。佐名が退場した時くらいがっくりきそうだ。

次の大河ムード醸成役者として、栗原小巻於大の方)の登場が待ち遠しい。
家康の老獪さや怖さはあまり強調されないのだろうか。