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『真田丸』第3回『策略』

大河ドラマ

脚本家が書きたくて書いている題材だから大きな不安はなかったが、コメディパートの悪乗りや過度な現代風味だけは勘弁してほしいと思っていた。意外なことに、極太陰険大河『草燃える』(再放送録画視聴)でさえ、北条政子の妹たちが「お姉さまってば、聞いてちょうだいヨッ!」ってのが始まると1.3倍速にせざるをえなかったのにひきかえ、『真田丸』はそこまで苛々させられない。とくに、今回はおばばさまの勝手つんぼと母上の大騒ぎがなくて助かった。
薫「婿殿が生きてるといいですね」
とり「死んでますね」
は二人の性格を象徴する場面。今のところ、とりは女性陣では断トツのリアリストだ。
きりの「足やっちゃったかなぁ」はいただけない(演技じゃなくて脚本が)。長澤まさみは三谷脚本の『わが家の歴史』で数奇な運命の女性を演じてはまっていたので、一回くらいは悲運のお姫様をやってほしい。

今回はいきなり真田と織田が対面するのでなく、国衆の合意形成のために昌幸があれこれ画策する話だった。ディスカッションを書ける人が脚本家だと楽しいな! 狸親父だらけの面々にあって、信幸だけが真っ正直で父親に欺かれたりするのだが、だからといって頭が悪いみたいな描写に走らない。武士はみなさんIQが高めで見ていてわくわくする。昌幸に信伊という有能な弟がいたのは初めて知った。栗原英雄はちょっとダークな切れ者を体現してかっこいい。

おちゃらけた描写もありつつ、「生きるか死ぬかの戦国時代へお連れします」の約束はちゃんと守られている。攻め落とした高遠城で家康があれこれ指図する様子から、敗軍の無残な死に様がわかる。兵たちが戸板から死体をゴロンと捨てる場面は、黄金期の大河でもなかなか見られなかった後始末のひとこまだ。
忠勝が見るからに人徳はあるけど暑苦しくめんどくさそうな男で、家康に煙たがられているのが笑えた。今回の家康は人間臭くていいなぁ。内野聖陽は幸運な役者さんだ。"大河の主役は罰ゲーム"と言われる時代にあって例外的に硬派な『風林火山』の主役を張り、近年ではその次にランクインしそうな『真田丸』でも重要な役に当たっている。

三傑を出すドラマにしては、小規模の戦いもいろいろ出てくるところに新鮮味がある。信繁たちと室賀の領民の小競り合いの顛末は、百姓たちの暮らしぶりだけでなく、きりと梅に第一印象とは裏腹な面があることまで見せて、実に効率的な作劇。「暴力は何も生まなからぁ~、話し合いましょうよぉ」なんぞと言い出すアホなおなごが出てこないのも清々しい。