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『ボーダーライン』

民放とは格の違いを見せつけている。つつましいサイズ、端正な字体の「土曜ドラマ」が画面に映るだけで、この安心感。初回はドキュメンタリー・タッチを狙ってカメラを動かしすぎるので、見ていて若干疲れたが、2話目からは落ち着いた作りになった。VFXの進歩のおかげで、火災現場が迫力満点。消防署員の誇りと職務と人間模様を、視聴者をぐいぐい引き込みながら描く。消防車の操作専門の人がいることや、水量調節の様子など、技術的な説明がある点でも貴重なドラマではないか。主人公が「ここの人たち、押しつけがましいんですよ」という場面があるが、押しつけがましさが何より嫌いな自分が見ていてかちんとくることが全くないので、よほど上等な作りなのだと思わされる。

身勝手だったり虐げられていたり、感謝を知っていたり知らなかったりさまざまな一般市民が出てくるが、生活保護費をもらった日は飲んで暴れる人がいるとか、よくNHKで描けたな。現場から浮かび上がる家族関係について、安易な家庭礼賛に走らず、「どこの家も崩壊している」みたいな方向にも走らないバランス感覚がいい。

一番驚かされるのは、宇田学と梶本恵美のオリジナル作品ということ。オリジナルだとまともな脚本は望めなくなっている大河とのこの違い! それにしてもNHKは妙な局だ。淡々と事実を伝えるべき7時のニュースやクローズアップ現代は、なにやら三文メロドラマか偏った思想のプロパガンダ(調子に乗って公共サービスに携わる人々を叩くことも多い)の枠と化しているいっぽう、奇天烈な作り話を見せてもかまわないドラマ部門が、消防署員への敬意をもって真に迫ったものを作っている。素人が考えても「それは消防じゃなくて警察の管轄だろう」と思うネタが出てきたが、時間の制限があるからそのくらいはフィクションと割り切って視聴。

小池徹平は本作といい『鉄の骨』といい、硬派な良作に恵まれている。山口馬木也が現代劇でいい役を貰っているのを初めて見た。顔立ちや体格も生かせる頼もしいリーダーが嵌っている。藤原紀香は、のっぴきならない理由があってあえて負担が大きい仕事を選んだシングルマザーを好演。これからもNHKで生かせてもらえるとよいな。橋爪功はもちろん筧利夫にもいぶし銀の魅力がある。