『MOZU Season 1~百舌の叫ぶ夜~』Episode 6

前半のクライマックスとしてあれ以上は考えられない。羽住英一郎、渾身の一話だった。羽住監督にはぜひ、暗めのアクション映画を撮ってもらいたい。それも、30代半ば以上のおっさんが活躍するやつ。
美希の尾行結果報告を中心に、理路整然と新谷と爆破事件の関係を説明し、宏美の心情吐露によって新谷兄弟の生い立ちと精神の軌跡を説明し、廃病院の場面で最新の百舌の状況を描く。三要素の配分が絶妙だった。殺陣に関しては、若い池松君も年食った吉田さんもその他のチンピラさんたちも大健闘だったが、なんといってもアクション・コーディネーター諸鍛冶裕太のアイデアがすばらしい。

爆破事件の回想シーン。喫茶店そばのビルから出てきた青いトップス、ライトグレーのスカートの女が、倉木妻に見える。結局、自分を悩ませるダルマを消すために独断で爆弾をしかけたということなのか? 前回まで何度も写ったごみ箱からはみ出した髪の毛は、生首の髪でなく鬘と判明してなにより。

長らく新谷妹の正体は、多重人格か女装趣味の和彦かと疑ってきたが、一卵性双生児の弟だった。劇中では百舌が覚醒したが、当方の記憶は蘇らず。が、そのおかげで次回からもストーリーにわくわくできる。こういう時は耄碌するのも悪くないかなって思います。

百舌が暴れ出してドラマの次元を超えた濃い画面が展開しているのに、いきなりCMで中断。これだから民放はいやだ。CM明けは……中神ってば、刺されてから何分生きてんだ、おまいはマキューシオか?! 極私的には悪目立ちであまり感心しない助演ぶりだったが、ネタキャラというかかなりの人気キャラになったようで、吉田鋼太郎としてはありがたい仕事になったようだ。
早贄状態の中神を見て、常人の反応を示すのが大杉だけというのがよかった。今回はいさぎよく百舌を主役としてあつかい、無理やり倉木の出演シーンを引き延ばしたりしないのもよかった。

廃病院のシーンは、今年のドラマでもっとも印象に残る場面の一つになりそうだ。石井隆ワールドの、性的加虐と血のにおいを薄めたような雰囲気づくりが好もしい。スタッフが照明の暗さに気をつけているのはいつもどおりだが、そのおかげで飛び散る鮮血を見せつけるようなグロテスク趣味を免れている。

最後に香川照之の言葉を。「観る人は、作品の“匂い”を味わうんですよ。夜中に強いウィスキーをグッと飲むように味わって観られるドラマになればいいなと思うんです」(『MOZU オフィシャルガイドブック』、p48)。健康飲料ばかりじゃ生きてる甲斐がない、甘いカクテルにも飽きたという人々が、一人でも多くこのドラマに出会えることを望むばかりである。