『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.8-10

episode.8
間一髪、嫌味で保身しか考えないエリートみたいだった青沼が救援に駆けつけた、と見せて、すべては鍛冶の筋書き通りだった。この二ひねりと各自の特徴を生かしたアクションの組み合わせがおもしろい。樫井が秘密の技を繰り出す……なんてことはなく、何度も愚直にタックルをかます展開が胸熱。

episode.9-10
金子ノブアキは暗い色気が魅力的だが、結城が恨みを抱えた理由が「え、このドラマでそれ?」といささか肩透かしを食らった印象。
思えばepisode7でずいぶん被害者ぶってた坂本クンは突っ込みどころ満載だった。自宅通学可能な大学が山ほどある東京で持ち家に住んでいて一人っ子。ハッカー活動に向けた頭脳と時間を受験勉強に向ければ、貸与型奨学金を取って並み以上の大学に通う未来は開けそうなもんだが。で、このたびも途中から「コッカコッカ」と朝日が飼ってる鶏かインコみたいに姦しいことこの上ない。国家と国民が乖離した存在という価値観も、まああいかわらず。過激派に甘いマスコミだが、首相の息子が関われば悪事となるわけか。昨年せっかく『シン・ゴジラ』がエンタメ界に新風を吹き込んだのにくらべると、今作のストーリー展開はいかにも古い。いまどきの公安のお仕事なのに"わるいがいこくじん"はミサイルがらみで申し訳程度に出てくるだけ……脚本担当の金城一紀の来歴を読んだら、まあそういうことかとある意味納得。映画『ダディ、フライ、ダディ』(原作、脚本)とドラマ『SP』はたいへんおもしろかったが、今回はそれらにおよばず。
よく引き合いに出される『MOZU』を見た時は、酔狂もそこまで極めるのならストーリーの穴なんかはつつきません! という気持ちになれたが、『CRISIS』は予想より小さくまとまってしまった感がある。平成維新軍の活動が尻切れトンボ気味なのはプロットミス?

何かと子供っぽくなりがちな和製刑事ドラマにあって、鍛冶は味のあるキャラだった。最終回、総理と話しながら指をひらひらしていたのには何か意図があったのだろうか? 『モンスター』のルンゲみたいな。
小栗旬西島秀俊も役柄を楽しんでいるようなのが、視聴者にとっても楽しかった。西島氏は雰囲気のある貴重な映画俳優だし、仕事選びはわりと信用できる人だが、アクションだけでない全体的な芝居というと、感情表現も緩急自在な小栗氏に軍配が上がる。

老獪な警備局長を体現した長塚京三の演技はもっと見たかった。田中哲司は何をやっても安心な人だが、クールに見えて部下思いな心情表現はもちろん、中年にはきついアクションもこなして極私的にはまた株が上がった。野間口徹の「鼻利き過ぎ」キャラは最初どーすんのかと思ってしまったが、最後まで物静かで頼れる仲間だった。グズグズメソメソキーキー要素抜きに女性捜査官がキャラ設定されていたおかげで見ていてストレスがなくて助かった。新木優子さんの今後に期待したい。

 

アクションシーンだけ、もう一度くらい録画をリピートしたくなるかもしれない。劇伴を控えた一対一の肉弾戦が強く印象に残る。

『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.7

いまのところ国内テロは暇と学歴を持て余した若者が起こし、小金と暇のある老人と主婦がシンパになったりするパターンばかりなので、進学校に通っていた大山に向かって坂本が「君はこっち側の人間じゃなかったのか」みたいなことを言うくだりは、私見ではいかにも作られたお話。

後味の悪さが売りみたいなドラマなので、大学生は一人ぐらいヤられてしまうかと危惧したが、特捜班のメンバー全員無事に任務を果たしてくれた。
大人たちが子供にほだされたりせず、冷静に行動するところがいつもながらかっこいい。
吉永まで大学キャンパスに出張るとは! 田中哲司の中年の貫禄と敏捷過ぎない動きに痺れた。
「今ならやり直せる」と言ってテロリストのバッグを取り上げる場面に、いかにも樫井らしい味がある。今後、一度くらい野間口氏の無茶なアクションシーンがありそうな気もする。
大山にはアクションシーンはむずかしいかな~、でも訓練のシーンがあるからもしかしたら……と期待していたら、特殊警棒を投げて発砲を阻止し、その後も格闘技を披露していておおいに惹きつけられた。冷静な取り調べで坂本に揺さぶりをかけるし、まさかのパスワードをめっけるし、テロリスト相手に武闘派するし、新木優子ファンには堪えられないエピソードだったのではないか。

「鍛冶は頭が切れすぎる」みたいなセリフが気になる。日本のドラマが一番苦手なのが金持ち描写、次が頭がいい人描写なのだが……金城一紀なら期待しても大丈夫、と思いたい。

『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.6

海外のドラマなら即射殺となるところ、日本特有の理由でそれができない。という現実をふまえて毎回工夫を凝らしたアクションシーンを見せてくれるドラマだが、今回も堪能した。それにしてもホームセンター店員の後片付け大変そうだな……。
教団の面々がふた昔位前の秀才の面構え+眼鏡で、独特の迫力がある。

山口馬木也はすぐれた時代劇俳優だ。骨太の個性がいまどきの連ドラに合わないので、現代劇ならNHKくらいしか使いでがないか――『ボーダーライン』の好演は忘れがたい――と思っていたが、今回はよい役をもらっていた。
『CRISIS』の世界では、潜入捜査官は「死して屍拾うものなし」を覚悟しなくちゃあかんのか??
教団側に"転んだ"里見の辛さを重々承知のうえで、あえて厳しい言葉をかける稲見。小栗旬はこういう芝居にも説得力を持たせられる人だ。

わりと野間口が暇そうだった。来週は活躍してくれるかな?

 

『CRISIS:公安機動捜査隊特捜班』episode.5

想定外で出てくる不審なおにいさんたちが物凄く人相悪いわけでもないので「平成維新軍?」と思ったが、そうではなかったらしい。ということで、episode.5は維新のみなさんお休みの回。

潜入捜査官の苦しみを語る西島秀俊……これ『ダブルフェイス』じゃないよね? こういうのを敬意をもったオマージュと感じるか、ちょっと笑っちゃうか、見る側の精神状態や好みに左右されそうだ。

潜入捜査官の苦しみを表現する小栗旬。沢田の遺体を前に立ちあがる時の、絶望とか空虚感とか怒りなどといった言葉による安易な形容を拒絶する表情づくりがすばらしい。あまちゃんの正義漢ではない男でもここまでダメージを食らうのだ、という説得力。涙や絶叫で説明させない金城一紀の脚本もハイセンス。ここでBGMがもっと控えめだったらさらに上級ドラマになったとは思うが。

「責任は俺が取るから心配するな」
鍛冶はふだんは「わたし」で、腹をくくると「おれ」になるわけか。今後はどんな"食えない"司令官ぶりを発揮してくれるか楽しみだ。

アクションシーンは毎度秀逸。アクション監督の田中信彦氏とアクション・コーディネーターの和田三四郎氏の役割分担がよくわからない。来週は特殊警棒の大立ち回りに乞うご期待!

『小さな巨人』第4話

錚々たる人材を集めておきながら、ノンキャリが正義の浪花節とスポ根ドラマの型を延々見せる手法にそろそろ飽きてきた。2課が何を追ってるのかだけは気になるので、次回から1.3倍速と等倍を組み合わせた再生でチェックすることにしよう。

『THE FALL 警視ステラ・ギブソン』シーズン3が始まったので、今期楽しむ刑事ドラマはイギリスの『FALL』と日本の『CRISIS』に限定と決まり。『犯罪症候群』はいちおう視聴継続。
長谷川博己にはいつかBSプレミアムで、英国の刑事ドラマに出てくるような静かにゆっくり教養高そうにお話しする警察官を演じて欲しいものだ。嫌味たっぷりでも、いい人そうでもどちらでもいいので。

『4号警備』第3回

久しぶりにドラマを見て感動した。
トーカー被害に遭ったうえにネットで中傷されて故郷に帰るしかなさそうだった由宇が、ガードマンとしてガードキーパーズで働いている! 架空の人物の話なのに心の底から「よかったな!」と思ってしまうとは。

今回は人間を一面だけで決めつけない、多面的に描く作劇にしみじみした。鬼平に通じる味わいと言ったらこじつけか……ちょっと違うか。
一見軽薄そうな本田社長が、じつは社員の心身を案じていた。「生きて帰ってくる社員がいい社員だ!」
ブラック企業の社長はひどい奴だけど、子どもまで非難されるのはひどいよね……までならありがちな手法だが、そのあとに見ごたえがあった。社長を罵倒する朝比奈の姿で視聴者に少々留飲を下げさせておいて、最後に石丸の口から「お父さんは人殺しじゃないよ」、「あなたはもっと楽になってもいい」と語らせる。儲けが減ってもいいじゃないかなんて他人事だから言えるんだよなとか、欧米の企業だったら社員に変なゼッケンつけるいじめはなくともいきなり首切りだよなとか思ってしまった。が、とにかく嫌われ者に"加害者"のレッテルを貼って済ませない、宇田学の物語作家としての矜持に惚れた。公式HPの"「少しの勇気があったら」守れるものがある"が、次回はどんな形で描かれるのか楽しみだ。神谷の旦那が活躍してくれますように。

石丸の娘を演じた久保田紗友が、面長で大人びていて観察眼が鋭そうで忘れがたい。もう一度くらい登場してほしいものだ。

『おんな城主直虎』第15回『おんな城主対おんな大名』

トーリーはそこそこ骨っぽい。
一番の期待は菅野よう子の音楽だったのだが、自分が勝手に期待していたとんがったメロディーとはほど遠い――プロデューサーの意向なのかどうかわかりかねるが――子ども向けの時代劇アニメに流れそうなBGMがたびたび流れる。
昨年の『真田丸』は大大名とくらべていかに国衆が小さな存在であるかをユーモアまじりに描いていた。今年は、今川にくらべ、井伊がいかに内向きで学習能力に欠けているかを、表面的には甘めのBGMをまぶしたりしつつ、実質的には容赦なく描き出している。
近年は主人公の性別にかかわりなく"政治"や"職能"をまるっきり語れない大河が散見されたが、その点今年は健闘している。脚本や演出の格調、主演の演技力が比較にならないので引き合いに出すのも恐れ多いが、徳政令についてある程度踏み込んだのは『花の乱』以来ではないか。労働と無縁で暮らす上級(でもない?)武士の奥方や令嬢の生活費を"化粧料"と称するとか、それは各自所有する田畑の上がりだとか、小学生でもわかるように丁寧に説明されていて、なかなかためになる大河では?

序盤は「大河ドラマを見ている!」という心地にさせてくれたのは佐名役の花總まりの所作と台詞回しくらいだったので、退場が残念だった。その後は浅丘ルリ子が締めてきたが、寿桂尼もそろそろ寿命が尽きそうだ。
クドカンのドラマでおなじみの小松和重は、画面の隅にいるだけでも楽しくなる。市原隼人傑山は腕の筋肉を誇示する場面より戦う場面が増えることに期待。ムロツヨシはいかにも当て書き。「銭は力じゃ」をNHKで日曜8時に堂々語れる人物は痛快。

21世紀に入ってからのお気に入り上位が、現在再放送中の『風林火山』と『八重の桜』三分の二、というのは揺らぎそうもない。『風林』は権力闘争の描写やコメディセンスだけでなく、女性陣の描き分けも好きだった。『直虎』は女にもいろいろいる、という当たり前のことをわりと公平に描いていると思う。ヒロインの身近にいる若い女性だけでも、政治センスと客観性のある賢いなつ、気のいいあやめ、視野が狭くぐちゃぐちゃした感情だけで生きるしの、と三者三様である。第15回も知恵がつきはじめた直虎と、長きにわたり知力で家中をまとめてきた女傑の対比が利いていた。やぶからぼうに「ほ~、お前はみどころのあるおなごじゃ」なんていうんじゃなくてなにより。法律論議で押したり引いたり、施政の基本方針を問い、領民の信望を示す書状を目にしてこれなら政次より直虎に任せた方が領地が安定しそうだ、とおんな大名が相手を認める根拠がきちんと示されているのが気持ちよかった。直虎がめざすのが緊縮ではなく「潤すこと」なのもあっぱれ。

子役、本役通してヒロインがどうも苦手だ。「未熟者だけどがんばってま~す」みたいなノリが消えるのは秋ぐらい? びっくりする演技の巧い下手は全体的な演技のレベルに通じるという持論は、今年も変わらない。

海老蔵が信長役と聞いた。本格的な〈敦盛〉の披露が待ち遠しい(やや問題発言)。