『美食探偵』終わる

東村アキコの原作は未読。
あまりに小池栄子の評判がいいので、第3話から録画視聴。第2話はネットで再生できたが、初回を見ていないので勘所は抑え損なっていると感じる。

素人探偵の明智五郎が、弁当屋を営む小林苺――明智は執拗に「小林一号」呼ばわり――を助手として、食にまつわる殺人事件を追う。殺人鬼・マグダラのマリアは、怒りや悲しみをかかえた人間たちを犯罪に駆り立てる"黒幕"であり、明智にとってのラスボスであり、さらには彼にとって唯一理解し合える相手、のようにも見える……。

オープニング曲は坂東祐大のオリジナル。サン・サーンスの『死の舞踏』を彷彿させるメロディーも含まれ、ちょっと妖しい美食と死の物語にぴったりだ。照明も、遅い時間の大人も楽しめる世界作りに一役買っている。

食の世界に魅入られた明智は、タナトスの女王のごときマリアに魅入られてしまい、絶好の逮捕のチャンスにマリアと手に手を取って逃げ出したりする。それでも、おいしい弁当を作る苺が殺されそうになると涙する。まあ、ちょっと日本のドラマではあまりいなかった人騒がせな探偵さんだ。

長谷川博己に砂糖少々加えたみたいな中村倫也は、食に敏感で服のセンスが微妙で浮世離れした明智五郎を的確に表現。今後の活躍に興味がわく。芸達者な北村有起哉が語尾に「にゃあにゃあ」つける(が名古屋弁ではない)妙な方言を話す上遠野刑事を楽し気に演じる。佐藤寛太劇団EXILEの人らしいが、コメディセンスがいい。シリアスな役でも見てみたい。友情に篤い女バイカー桃子を演じたのは富田望生。たんなるふっくら枠扱いではなく、生きた脇役設定だったのが嬉しいし、本人ものびのびと演じていた。
小池栄子は評判にたがわぬたいそう魅力的なファム・ファタールであった。第6話での小芝風花との対決シーンは、いろいろな意味での格の違いを見せつけた。日本のドラマは子供っぽいと言われがちだが、マリアのような危険で毒のある大人の女を出せるのなら、まだ捨てたものではない。

評判がよかったからといって、「実はマリアは生きていた」ってな調子のスペシャルとか第二弾は興ざめなので避けていただきたい。