ここ2年の連続ドラマ

*国内ドラマ~リアルタイム視聴
2クールに1本か2本見る習慣はあいかわらず。
重版出来!』:圧倒的に印象に残る。一流クリエイターへの敬意、クリエイターを目指すも挫折する者への冷徹だが愛情あるまなざしに心を打たれた。
監獄のお姫さま』:クドカンだから見た。お得意の過去と現在を行ったり来たりの手法で、アラフィフを中心に道を踏み外した女の集団を描いた人情劇。エンドクレジットが流れるたびに、「またスタッフの手のひらで転がされていたな」と脱帽したものだ。このドラマが良かったからと言って、伊勢谷友介をもっと民放連ドラに出そうとする(誰が?)のは間違い。「むやみにテレビに出ないし、基本NHKにしか出ない」スタンスの人がめずらしく民放に出たところがミソなのだから。個人的には、『うぬぼれ刑事』の軽さやばかばかしさの方が好み。
『神の舌を持つ男』:堤幸彦だから見た……で、堤カラーは強く出ているにも関わらず、あのつまらなさはなんぞ? テンポの悪さだけが原因ではなさそうだ。内輪受けに走り過ぎたか。佐藤二朗以外に笑いを作れるキャストがいないのも辛かった。

*国内ドラマ~再放送
逃げるは恥だが役に立つ』:家人につきあって視聴。ど~~もお呼びでない感じだなってことで、第一回終了と同時に離脱。最終回まで見た人々の「恋愛至上主義に疑問を投げかけた佳作」という評価が当たっているのなら、多くの人を救った良作と言えるのだろう。
『カルテット』:あまりにいろんな人から「絶対好みだから見るべき」と言われて視聴。久々に、先の読めない展開つづきで、一気再放送をわりと一気に完走した。四人が偶然知り合ったはずはないだろうと思った以外は、脚本家の手の内が読めないまま最終回まで引きずられていった印象だ。曲者俳優の松田龍平が一番常識的なキャラを担当したところはおもしろい。現代劇の松たか子をいいと思ったのはこれが初めて。椎名林檎の音楽もエンディング映像も都会的でかっこよかった。高橋一生はどちらかと言えば好きな役者だが、こういう売り方ばかりすると役幅が狭まるのではないか。ストーリーはおもしろかったが、「こんな台詞書けちゃう俺♡」みたいな坂元裕二のどや顔が何度も鼻についたので、やはり好きにはなれない脚本家だと再認識。坂元大河だけは実現してほしくない。あと、寿美男じゃないほうの大森大河も。
『アンナチュラル』:今期は何も見る気になれなかったが、『アンナチュラル』を絶賛する意見を目にすること多し。再放送があったらチェックしたい。

NHK
悦ちゃん』:明るく楽しく洒脱な極上エンターテインメント。鬱々とした場面もそれなりにあったが終わり良ければすべて良し。後釜の『アシガール』も健闘。土曜のドラマというと夜8時か9時台の社会派に傑作が多かったけれど、これからは6時台のほうも"明るいドラマ枠"として良作を連発していくのではないか。
夏目漱石の妻』:疲れている時にはとても再見する気になれないが、ずっしり重みのある文人ドラマだった。十年後にも記憶に残りそうだ。

*今期~来年のドラマ
『コンフィデンスJP』が始まると思うとわくわくする。保存したくなる出来でありますように。
朝ドラは鬼門――『あまちゃん』や『てるてる家族』は例外――の思いはぬぐいきれないが、秋に始まる『まんぷく』には興味あり。主演が安藤サクラ、夫役が長谷川博己、演出が安達もじりときたら、コクのある大人のドラマができなきゃ嘘だと言いたくなるが……福田靖が起業の扱いだけでなく男女の人情の機微の扱いも得意な人だといいのだけれど。今期の『半分、青い』はスルー。佐藤健が重要な役でしかもNHK。だがしかし昨年、脚本家の名前を聞いた時点で、"not for me"のフォルダーに入れてしまった。
最大の楽しみは次期大河『いだてん』。来年再来年とビッグイベント続きだが、『いだてん』を含めて幸福な記憶が残ることを願うばかりである。


*しつこいおまけ:海外ドラマ
あいかわらずイギリス以北のヨーロッパのドラマが好みだ。
『トラップ 凍える死体』:嵐に閉ざされた小さな港町に身元不明の惨殺死体が漂着する……アイスランド本格ミステリ。誰もが顔見知りの狭い港町で、次々と住民の秘密が暴かれていく。事件を解決した刑事は、身内から恨まれる。やたらと寒そうなおかげで、温帯が舞台だったら臭ってきそうな死体もそう感じさせない。ノルディック・ノワールのつねで、国際的な人身売買組織が暗躍するものの、今作では少女たちの未来に一筋の光明がさす。
ダウントン・アビー』:最終回はずいぶんと盛りだくさんだったが、無理な駆け足とは感じさせず。権威や富を悪にしたがる本邦映像作家にはなかなか作れない、"貴族の言い分"込みのイギリス流大河ドラマであった。
『ヒンターランド』:ウェールズ発。話が辛気臭いし美男美女は出てこないし、つねに眉間にしわを寄せた主人公はベテラン刑事にあるまじき公私混同をやらかすし……なのに、地味におもしろい。荒涼たる風景に疑心暗鬼の人間関係においしくなさそうな食べ物。日本でぬくぬくしながらこういうドラマを見物するのはいいが、間違ってもあちらの国で暮らしたいとは思わない。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』:WOWOWで放送したのを、シネフィルWOWOWで再放送。偶然にもBSプレミアムでは吹き替え版を放送中。日本の声優はひじょうにハイレベルだが、イギリスものは字幕版が好み。吹き替え版だと威圧的なキャリア官僚の声が太くて威圧的にされがちだ。が、ソフトな口調でいけずなことを言うところがイギリス流のお芝居のおつな味なので、そこは聞き逃したくない。『主任警部モース』は英国でたいへんな高視聴率を叩き出し内容的な評価も高いそうだが、そのスピンオフ『ルイス警部』も今回の『刑事モース』もまったくレベルダウンしていない。孤立感を味わうインテリと庶民派のコンビとか、同一犯と思われた二つの事件がまったく関係のない犯罪だったとか、オックスフォードの美しい街並みを生かすとか、『主任警部モース』を踏襲しながらも、マンネリ感はゼロである。警部になってからのモースは押しが強く人遣いが荒い上司で、そこがかっこよくもあったのだが、新米時代のモースはシャイでガラス細工のごとく繊細である。一見保身に汲々としているかのような貧相な警視がモースの危機を救ったり、だらしない州警察を一喝したり、意外性で魅せる。『刑事モース』に出てくる新聞記者役のアビゲイル・ソウが、本家モースを演じたジョン・ソウの娘と知ってびっくり。言われてみれば彫りの深さも立派な鼻もそっくりだ。何度も意味ありげにフリーメイソンが出てきたが、今後も消えた証拠品が回収されたりはしないのだろうな。『主任警部』なんて犯人がつかまらないまま終わった回もあるんだし。
『ハウス・オブ・カード』:主演男優がやらかしたので、あとは彼抜きで制作されるとのこと。第一シーズンでたまげたのが、主人公が教会のキリスト像に唾を吐きかける場面。こんな場面を入れるからには、彼が碌な末路を辿らないことは制作側が決めているのだろうと思っていたが、新シーズンは「フランシスは○○で死亡」とかいう強引なテロプとともに幕を開けるのだろうか? ロビン・ライトは大統領でも国防長官でも嵌りそうだから、彼女だけで画面がもたないという心配はなさそう。
ゲーム・オブ・スローンズ』:とてつもない傑作らしいのだが、これに手を出すと生活が破壊されそうで二の足を踏んでしまう……。