『64(ロクヨン)』第3回『首』

この緻密に作られたドラマのカットを数えてみようとしたが、5分で挫折。シーンを数えることにしてみたところ、「あと3日」の字幕が出るまでの7分間で、回想される三上自宅、屋外、署内、雨宮宅が合計12、現在シーンが、広報室、屋外、署内廊下、階段で合計25。その後の40分強で回想シーンが約20、現在シーンが広報室10、三上自宅8その他で合計約30。おそろしく細かく場面転換するなか、記者クラブのシーンだけは時間を取り、三上に交通事故被害者、銘川亮次に関する情報をゆっくり読ませる。秋川ちゃんや女記者たちが、自分たちの取材意欲および能力不足を思い知らされる、ある種テーマの転換点ともなる部分である。専業俳優ではないからこそ(?)かっこつけに走らないピエール瀧の実直な演技がすばらしく、またお涙ちょうだいを狙って老人の晩年再現フィルムなんかを使ったりしない演出がさすがである。カタルシスを小出しにするドラマではないながら、記者とのやり取りで闘志を取り戻す三上、地道な仕事ぶりが報われた蔵前とも、ひさしぶりに一歩踏み出したいい顔をしていた。
赤間はリップクリームで人物造形していたが、本部長は知恵の輪がお好きというユニークな設定。
広報室の棚に猿だか豚だかよくわからないマスコットが置いてある。自分にとっては唯一の癒しの存在だが、この作品でアップになることはなさそうだ。
三上の妻はつねに電話の子機を握りしめている。彼女が出てくるたびに、かわいそうだがその狂気が三上にとって最大の重圧なのだと思わされる。
あらたな誘拐事件対策室から締め出される三上。部下につめよる場面で額に汗が浮かぶ。演技で出していたならすごい。
サブタイトルが毎度漢字一字でハードボイルドだ。今回が「首」で次回が「顔」。犯人の顔を見た人間がいたということか? それとも、事件被害者となった赤間の顔が打ちひしがれていくさまを描くのだろうか? あまりに荒唐無稽な長官と県警の対立にはもっていってほしくないものだが。