『55歳からのハローライフ』第1回~第2回

見送るつもりだったのだが、主体性がないこととてツイッターで目利きが褒めているのにつられて、あわてて第1回を再放送の録画で視聴。気に入って第2回から本放送を録画。

5分ほど見たところで、賞を取りそうだなと思った。テーマやスタッフワークの質の良さが「賞向き」。

第1回は、現実描写に主人公の心象風景を織り込んでいくさまが、ベルイマン張りといっては深読みと言うか褒めすぎかもしれないが、幻想的で魅せられた。そこに流れる清水靖晃の音楽が浮遊感、かすかな希望や絶望を醸し出す。

リリー・フランキーのキャスティングが絶妙で、もと脂ぎったやり手の営業マンに見えるかというと微妙なところだが、いわゆる演技派やスター俳優の余計な自己主張やら見栄を張る芝居やらがないおかげで、すんなり視聴できる。
ハセヒロの使い方もまたユニーク。主人公を弾劾することなく――そんなことをする心療内科医は論外だが――「それは気づきです」と教える場面がさまになっている。

第2回は脚本が印象に残る。
この手のドラマは、妻を被害者としておだてる傾向が感じられ、それもあってツイッターを見るまでこのドラマはスルーの意向だったのだが、通して見ると夫婦を公平に描いているところがよかった。

夫が粥を作ってくれたのに、礼の一つも言わないどころか、ペットがらみで文句を言いに行く場面で、妻の未熟さを描いている……と感じたのだが、その感想を持った人を見かけない。自分が穿ち過ぎなのか??
口下手な男が、不器用なりに妻を気遣ってきたことが明かされる。元クライアント夫妻のパーティーに足しげく通ったのも、美人の奥さん目当てだけでなく、連れていくと妻が楽しそうにするからだったようだ。ホスト役のマキノ・ノゾミってマキノ省三の一族なのか?と思ったが、かんたんに調べたかぎりでは、関係ないらしい。美人の奥さんがぴったりの一路真輝はほんとに美しい。ああいう大人の美女をもっと大きな役で拝みたいものだ。

登場人物は葛藤を抱えた夫婦ばかりとはいえ、うるさい親類縁者のいない都市近郊にけっこうな住まいを持ち、子供は立派に成人し、さしあたり金銭的な苦労は免れている。このドラマが10年後に再放送された時、どんな反響を招くだろうか。例外的な「持てる者」のドラマとみなされる可能性はある。

制作が『外事警察』、『TAROの塔』、『あまちゃん』の訓覇圭。脚本が『風林火山』、『TAROの塔』の大森寿美男。演出が『坂の上の雲』や三分の二はまともだった『八重の桜』の加藤拓。鉄壁の布陣というやつか。このメンツで原作つき大河を作ってもらいたい。日曜夜8時に「『風林火山』はおもしろかったのに」と唱える苦行にも飽きが来た。