第45回『火の鳥』

3話かけて大人の政治ドラマを描き、まーちゃんは陽気な寝業師に負け、寝業師はあっさりオリンピック担当大臣をやめ……前回は、まーちゃんをお友だちが訪問する場面で終わった。重い政治ドラマっぽい流れを、懐かしいような青春ドラマのノリで締めてくれた。

予想外に密度が濃く時間も長く、女子バレーのドラマが展開した。
ほんまもんの女優、安藤サクラと対峙してまったく見劣りしない徳井義実が凄い。誰が彼のポテンシャルを見抜いたのだろう?
第41回『おれについてこい!』ではわからなかった大松の苦悩。鬼の大松を今回のような視点で描いた作品はほかにあるのだろうか? 初登場シーンでさらりと「レイテで戦った」と言わせていたが、中隊長として年上の兵士を率いて無事生還し、バレーの技術を選手にたたきこみ、さらに(このあと)縁談をまとめ……人の上に立つ人物としての責任の果たし方が見事であると思わざるを得ない。実際とは違う精神主義だったみたいに伝えられるのが残念である。

先日、NHK臭強烈なドキュメンタリーで、いかにも女子バレーの選手が「社会の犠牲になった」みたいな描き方をしていたが、このドラマでは「あたしたちは犠牲になんかなってない!」。誰かを被害者にするのが近ごろもっともお手頃なドラマ作法だが、そういう方向に走らないからこの大河のスタッフは信用できる。
令和のセンスからすれば、バレー選手の髪型といいユニフォームといい全然かっこよくないのに、誇らしくコートに立つ彼女らのかっこよさに痺れる。
『いだてん紀行』でホンモノのサバサバ女子が「人のためなんかにできますかいな」とおっしゃっており、もうひれ伏すしかない気分。

大松と選手、まーちゃんのやり取りで新局面を描きながら、何十年にわたる――約40話にわたる――女子競技の回想シーンを織り込む。一周まわって金栗が走りはじめた瞬間の「自分のための運動」に戻ってきたのだ。けれど、当時オリンピックに初参加した途上国の選手たちの「国のため」が遅れた意識だの劣った発想だのとは言えるはずもない。

やまちんのアフリカ勢勧誘の努力は初めて知った。今ほど空路も発達せず、身辺警護に関する知識もなかっただろうに、よくご無事で帰還できたものだ。

知名度だけが取り柄の下手なアイドルみたいのが出ないすがすがしいドラマなのだが、予告で三谷幸喜が映ってやや心配に……へんにふざけず市川崑を演じるのは無理かなぁ。
今週寂しく帰った東元知事が、来週以降また仲間と笑えたら嬉しい。