大河ドラマ「いだてん」トークツアー ファイナル in 熊本

[12月11日追記]

12月13日(金)18:10~ NHK熊本『クマロク!』

宮藤官九郎中村勘九郎に訊く「いだてん」最終回

(おそらくトークショーの直後撮影されたもの)

[追記終わり]

 

会場:熊本城ホール シビックホール
日時:11月30日(土)1時半~2時半
トークゲスト:中村勘九郎宮藤官九郎黒島結菜
MC:石井隆弘アナウンサー
観客数:約700人

(以下、順番も詳細も確信なし)
石井:番組開始時点から全国をまわってきたトークツアーも今回で最後。熊本県内はこれで4回目。宮藤官九郎さんの参加は今回が最初で最後。
クドカン:今日はダブル・カンクロウですね。僕は「中村さん」と呼んだことはない、いつも「勘九郎さん」。
勘九郎:熊本のロケが素っ裸で始まった。スタッフは芝居の良しあしは全然見てくれない。「(まずいものが)見えたかどうか」だけでOKかNGかを決めていた。中学のシーンは、まわりが本物の15歳だらけ、あそこに僕が入ったので、すごく浮いてしまった。

石井:熊本の思い出は?
クドカン:2017年に取材で金栗さんの生家を見に行った。あまり大事にされていない感じで……なんだか……物置のようだった。今年の夏、家族旅行で立ち寄った時は、きれいになり、案内の人もいた。僕のことを知らないようで、とても丁寧に金栗さんのことや学校部屋のことを説明してくれた。名乗りそこなって、ずっと「へえ、すごいですね!」とか調子を合わせていた。五校の講師として、小泉八雲嘉納治五郎の同僚だった。八雲が治五郎を世界に紹介し、クーベルタンの知るところとなり、治五郎と交友を持つことになった。ほんとうに熊本とオリンピックは縁が深い。(後半はもしかしたら勘九郎が話したことかも)
勘九郎:大河のおかげでご縁ができた。これからもよろしくお願いします。
黒島:私は学生時代バドミントンをやった。妹もバドミントン選手で、先日は八代でのインターハイに出場したので、応援のために熊本に駆けつけた。

通路に金栗とその子の子供時代を演じた久野倫太郎くんがあらわれ、「清九郎、おいで」と壇上に招かれる。緊張してお話しできないので、勘九郎が代わりに「獅童さんに怒られるシーンは怖くてほんとに泣いちゃったよな」。大河効果でCMが2本決まって出世しているとのこと。また、勘九郎から「現場でトモロヲさんに『おじちゃん、演技巧いねえ』って言ったんだよね」と暴露される。

勘九郎シベリア鉄道で鬱々とする場面はとても大河の主人公とは思えなかった。外国人に対する評価はシビアだし、日本人にいたっては、「論外である」とか。

石井:女子スポーツの先駆者を演じた感想は?
黒島:陸上は初めてだったけど、体を動かすのは気持ちよかった。『アシガール』ではわらじで山道を走るのが大変だったので、明治に入ってずいぶん進歩したと感じた。
勘九郎:選手たちが僕の脚をさわりまくる場面、ちょっとやりすぎてまずいシーンはカットされた(逆だったかも……)
クドカン:村田富江は、実在の(テニス選手)田村さんと(陸上選手)寺尾姉妹を合体させた架空のキャラ。寺尾姉妹は世界記録を出したのに、新聞は記録にはいっさいふれずに「美人姉妹」と書き立て、悪い大人たちがブロマイドを売ったりした。嫁の貰い手が亡くなると危惧した父親の判断で、姉妹の五輪出場は取り消しになった。
黒島:槍投げは気持ちよかった。
クドカン:初めは金栗が生徒たちに、欧州での経験から抱いた女子陸上への思いを演説させるつもりだった。だが、”言葉の人”まーちゃんと違って、金栗さんは行動で思いを示す人。彼が槍投げをする姿に触発されて、村田も「こんちくしょー!」と投げるパターンに書き換えた。

クドカン:優秀なNHKのスタッフが、毎度読み切れない量の資料を持ってきてくれる。資料を読むと、ロス五輪では、いつ大横田がお腹を壊したかもわかる。東京五輪では、何時何分に何があったかすべて記録されている。嘘は書けないので、たいへん。

黒島:女子学生が教室でバリケード作るシーンも印象に残る。女性の強さがよく描かれた。
クドカン:あの次の回が関東大震災。震災と対比させるために、華やかな話にしたかった。

勘九郎:39話には僕の弟も出さしてもらいましたけど、僕はもう見てて号泣しました。皆さんもそうでしょ? で、40話からの怒涛の展開がすごかったですよね!?

石井:昭和にタイムスリップしたら、どの競技を観たい?
クドカンアベベ。実は裸足じゃなかった。で、何を履いていたかと言えば、こうご期待。
勘九郎:陸上(←あやふや)
黒島:柔道です(ヘーシンクのこと?)
クドカン:やっぱり開会式も観たい。まーちゃん、前回解任されたけど、そのままじゃすまないんですよね。

石井:大松監督きびしいですね?
クドカン:絶対体罰はやらなかったけど、まあ、とてもきびしかった。テロップで何度も「これは虐待ではありません」て出るけど、まあ、そう観えちゃう。安藤サクラさんは元々河西キャプテンに似てるんだけど、演じるうちにどんどんもっと似てきてすごい。河西さんは途中でお父さんが死んじゃって、結婚式では大松さんが父親代わりを務めた。
勘九郎:え~、そんな大事なネタばらしちゃだめでしょう!
クドカン:あぁ、もう現実に書いたことと、そうでないことの区別がつかなくなってる。書き始めた時は、金栗さんをいつまで出すか決めてなかった。でも、しょっぱなに走る後ろ姿を見て、最後まで行けるんじゃないかと思った。
勘九郎:白髪で走る僕の後ろ姿、シルバーバックっていうマウンテンゴリラみたいですね。

石井:来年のオリンピックでとくに何を観たい?
勘九郎:同日開催のサッカーと陸上のチケットが抽選で当たった。行くとしたら……サッカーかな。
クドカン:えー、金栗さんが陸上観なかったら顰蹙でしょう(笑)。
勘九郎:でもサッカー決勝に日本チームが進んだら、ぜったいサッカー観る。
クドカン:僕はネット動画で槍投げの女子選手を観て「いいなあ、この子」と応援してる。名前わからないけどその子がオリンピックに出たら、ぜひ観たい。
黒島:自分もやったのでバドミントン。(これからのことを訊かれて)『いだてん』に出て、日本の女性はすばらしいと思った。自分も力強く生きていきたい。

クドカン:実在の人物を描いたのは今作が初めて。実在の人物だから金栗さんのことはあんまり悪く書けない。でも、仕事とかどうしてたのかなぁ……と。ろくに家にいないのにたくさん子供が生まれてるし。
勘九郎:弟子が「笑ってるか走ってるかの人でした」ってね。
クドカン:そうそう。
勘九郎:スヤに「帰って!」と言った回のあと、僕はみんなからにずいぶん責められました。

今まーちゃんが生きていて、都知事が東さんだったら、ぜったいマラソンは東京でできたのに! という話で盛り上がる。

石井:今後の展開は?
クドカン:昭和の東京オリンピックが開催されて、それが2020年のオリンピックに続いていくんだなぁと思ってもらうストーリー。オリンピックはやはりお祭りだと思う。


フォトセッション時、ファンが「『いだてん』おもしろいじゃんねえ!」と書いたうちわ(?)を持っているのに気付いた勘九郎が「そう! 違う! そう!」とまーちゃんの物まね。場内拍手喝采

石井:このあと(NHKスタジオで?)ゲストのインタビューを行う。12月なかば『クマロク!』で放送予定。

感想
*笑いの絶えない楽しい1時間だった。クドカンがちょっとブラックなジョークを飛ばした場面もあり。近ごろ洒落のわからない日本人が増えているので、ここでは割愛。
クドカンはTVインタなどで見るのと同じ、トーク慣れした感じ。”すごい政治ドラマも書ける大物”感を漂わせない。ひとは見かけによらない、の見本。
勘九郎は役が抜けきらないのか、あえてそうしているのか、金栗モードを感じた。亡き父上のような立て板に水ではないが、話は上手だし、観客に対しても黒島さんに対しても誠実な印象。
*黒島さんは何度も「女性の強さ」という言葉を使ったが、この日見る限り、ご本人はかなりおとなしい。細くて顔が小さくて、10列目くらいの席からは、顔がよく見えなかった。
*後ろの列の人が「近所のおばちゃんが5人申し込んだけど、誰も当たらなかったらしい」。当選してラッキーと思う。どの年齢層にもかたよらないよう選ばれた感じ。
*県民総合公園運動競技場(現 えがお健康スタジアム)の第3ゲートが〈金栗ゲート〉の名で親しまれている。誰もその件にふれなかったのは少々意外。