第40回『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

『リバースエッジ大川端探偵社』でうらぶれた男を好演した岩井秀人。以来気になる存在だったが、今回は肝心な時にアキレス腱を切って演説が出来なくなる外交官、北原英雄がはまりすぎていた。「デゾレ」連発が気の毒ながら、演出の妙もあってかすかにおかしみも漂う。ここぞと言う時に担当者が体調を崩したりケガをしたり、それでも誰かが任務を受け継いでいく。このパターンは実は一度や二度ではないのだが、自分は見巧者の感想を聞いて遅ればせに感心したクチで、人生のままならさや人間のしぶとさやら、描写のうまさにあとから気づかされた。

妻子から"ある点については"低い評価しかもらえないのは孝蔵だけではなかった。東の都知事選出馬に関して、めずらしく逆直談判ケースを経験するマーちゃん。「だめだってわかってるからこそ、がんばりたいんだよぉ!」の東。落語に出てきそうな男のかわいげ全開であった。

最終章に向けて、これまでのおさらいをする……だけに思わせて、さらっと大きなイベントを織り交ぜてくる説明会。是清に直談判した御仁が何をしようと驚くべきでもないのだが、マッカーサーまで説得したとは! 敵は「従順ならざる日本人は白洲だけではなかった」と感じ入っただろうか? 戦後の苦しい時期に米国選手に打ち勝った日本人があれだけいたとは初耳である。

役柄の魅力に負けないキャストの投入が続く。"フジヤマのトビウオ"を演じるのが北島康介。演じ手の運動能力が、役の名アスリートを超えるのはこれが史上初ではないだろうか?
しかし古畑選手が中学生の時、左手中指の一部を失った件をついさっき読んだ。画面で指がどう映るのか、次回よく見なければ。
敗戦国の選手を馬鹿にしまくっていたアメリカ人たちは、裏オリンピックで結果を出した古畑たちにちゃんと謝罪し、すばらしいタイムを称えた。どっかの国とは大違い……。その後の、自分の国の成績がふるわなくなると、ルールを変える手段に出る欧米、律義にルールにそった練習を重ねる日本、の構図まで描ければスポーツ・ドラマとしてまた次元が上がるだろうが、東京五輪がゴールだからそこまで望んでは欲張りすぎというものか。

ヘルシンキ五輪会長の「オリンピックは金になる」発言も初耳。10ヶ月間、四三やマーちゃんの苦闘を見てきた視聴者としては、それを不真面目だの不純だのと否定する気にはなれない。

徳井義実に悪気がなかったわきゃないだろ~。しかし、逮捕されたわけじゃなし、結果的に納税したのだから、演技が放送されたってなんの問題もない。クレームをおそれず収録済みの映像放映とは、英断である。ニュースや似非ドキュメンタリーには辟易させられるNHKだが、ドラマに限ってはかけがえのない存在と思う。
正直、徳井氏がどれだけ"鬼の大松"に迫れるか想像がつかない。『まんぷく』で才能を浪費させられた安藤サクラのバレー選手演技はひじょうに楽しみだ。