小河ドラマ『龍馬がくる』(時代劇専門チャンネル&カンテレ)

おおいに笑えて脱力する"非"本格派時代劇。30分(実質20分前後)×4話構成。
"人生最後"の龍馬を演じる武田鉄矢本人の前に、本物の龍馬(三宅弘城)がタイムスリップしてくる。本物は、偉人伝に描かれた人物像とはまるで違う情けないところが多いけれど、ノリで場を明るくする男だった!

武田に向かって「タカダさん」と言っちゃうし、「龍馬」を「リュウマ」と呼ぶし、失礼にもほどがある箭内夢菜の役をご本人が演じる。いかにも日本髪やおすべらかしが似合いそうだしぜひお姫様の役で! と願っていたら、極私的お初の時代劇はお龍であった。勝気なお龍向きの人とは思えないが、今回は短いライトコメディなので問題なし。
おそらく生涯ただ一度と思われる、皆川猿時西郷隆盛もなかなかのおとぼけものだった。曲者の演劇出身俳優として山崎銀之丞も出演。

喧嘩はからっきしだけど、おそるべきスピードで「バイトして合コンして」の現代若者文化に適応する三宅龍馬。
撮影所ではどんどん武田の領域を侵食していく。

小ネタ満載のメタ"龍馬ドラマ"でもあった。
三宅龍馬が渡りをつけたアメリカ人のリストがすごい。携帯のメール一覧に出てくるのが、"すぴるばーぐ"、"げいつ"、"るーかす(件名:じゅだい おぶ たけだ)"、"あっぷる"、そしてなぜか"おばま"。
ハリウッドが考えたリメイク映画のタイトルが『バックマーツ・フューチャー』と『パイレーツ・オブ・カイエンタイ』。

累計100万突破のベストセラーが『立ちションして会社が出来た』(¥1,620、世海書房)――坂本龍馬が本気で教える本場の【立ちションベン】――

そして武田鉄矢の歌の物まねをする三宅龍馬。

暗殺場面では「僕は死なんぜよ!」。「福山よりかっこいい龍馬をやるぜよ」……おいおい大丈夫か! なぜか流れるチャゲ&アスカ。

企画・プロデュースが宮川朋之。
監督・脚本が細川徹。この人の『織田信長』もぜひ見なければ。
ミレービスケットとコラボ企画で3,000個を視聴契約者限定プレゼント。応募の締め切りは15日だそうだが、ちゃんと全品はけるか心配だ。

おまけというか、ご丁寧に『龍馬がくる』内で撮影された超高速・龍馬の一生と言うべき『武田鉄矢主演 大型連続時代劇・坂本龍馬』も20分弱放送してくれた。
ちなみに『龍馬がくる』で貼られた『坂本龍馬』のポスターには「監督:小友隆史」の文字。大友啓史のパロディーだ。
きっちり紹介されて勝に対面し、その勝から紹介されたということで、龍馬が西郷を訪ねるシーンがばかばかしさの極致である。
「遠かったでしょ」
「神戸からでしたからちょっと。あの角で迷いましてね」
「あああの角ねぇ」

「じゃ、時間なんで」と立ち去る龍馬。
ナレーションは小林研二が重厚に語ってくれるし、野口健司による撮影の色調は渋いし、ほんとに珍品であった。

時専のみならず地上波でも何度か再放送して多くの人々を笑わせてもらいたい。