『母、帰る~AIの遺言~』

作者の言葉……三國月々子

およそ人生にまつわるあらゆることに正解は見つかりません。そこにあえて、常に明確な回答を提示するAIを置いたらどうなるか……。
抱えた矛盾をぶつけあう家族たちが「それでも」と顔を上げてお互いを見る。そんなささやかな物語を生み出せたかなと感じています。(公式HP)

 

直人の目が変だから実はこっちがAIなんじゃないかとか、息子は母と浮気相手との子なんじゃないかとか、いらないことを考えながら見てしまった。ミステリじゃないんで、素直にヒューマンストーリーとして受け取るべきであった。直人が亡母の思いや一見ろくでもない義父の人となりを理解していく過程が、優しいタッチで描かれていて心にしみる。
故人を三次元コピーしてしまうと消去するのに心理的抵抗が大きいから、声だけ再現するという設定。今まで読んだり見たりしたSFにはなかった発想で「なるほど!」と思わされた。

音楽が吉森信で音響効果が吉田直矢。ピアノの音色が美しい。
人工知能考証が松原仁。考証って何したのだろう?
あの程度の喧嘩シーンのためにアクション指導が入るとはびっくり。

意外に無難だったラストより、AI退場場面の方が印象に残る。折り鶴が飛び去るゆかしい絵作りだった。
小谷高義Dの名はお初。丁寧なほどよいテンポの演出で次回お目にかかるのが楽しみだ。

キャストは柳楽優弥奥田瑛二などうまい役者ばかり。声だけであそこまで視聴者を惹きつける岸本加世子は立派である。
あらためて映像世界の母性神話の強さ恐るべしと思った。地方の中高年夫婦といえばこのドラマのようなパターンが多いのかもしれない。が、そろそろ分からずやの妻に悩まされてきた都会のサラリーマンに光を当てるドラマも作られるべきではないのか。深夜枠かBSなら男性視聴者もターゲットにできるだろうに。