『いだてん』第1回『夜明け前』

祭りが始まった! 

大友良英の疾走感のある音楽。明治の溌剌感とか大正モダンとか戦後の高度成長期の明るさとか、いろんなものを感じさせる横尾忠則の絵作りも楽しい。紆余曲折はあっても、「スポーツって楽しいもんだ」、「オリンピックっておもしろいもんだ」という感慨にふけりながら師走を迎えられますように。『平清盛』は音楽や美術がすばらしかったし、『八重の桜』は三分の二くらいは大河の格調を感じさせたし、『真田丸』と『おんな城主 直虎』は着眼点が新鮮だった。それでも、丸一年大河を堪能できたと言い切れるのは『風林火山』までさかのぼるので、今年こそはダイジョブそうだとわくわくする。

語りが志ん生というのは楽しみでもあり、しかし近年とみに呂律が怪しいビートたけしが演ずるというのが心配でもあり。
アニメ版『昭和元禄落語心中』では、山寺宏一石田彰関智一といった超一流の声優陣が落語家を演じ、存分に聴かせてくれた。あのレベルを実写で要求してはいけないのだろうが……。若き日の志ん生は、目つきに棘のある人よりはNHKドラマ版『落語心中』で期待以上にうまかった竜星涼で見たかった。
ともあれ、落語というのは人間の業を肯定するもの。アクが強かったはずの人々を妙に漂白せず、またNHK視点で糾弾したりせず、生き生きと描いてくれるだろう……クドカンだもの。

永井道明の五輪反対論がなんだか21世紀の人間も言いそうな内容だった。でも、押し問答の場面もうじうじムードにせずユーモア交じりの演出にするところが、さすが『あまちゃん』チームである。
優雅な園遊会に天狗倶楽部がなだれ込んできてお客や使用人たちがなぎ倒されるあたり、『あまちゃん』の南三陸鉄道開通式典と同じノリで嬉しくなる。暑苦しいお兄さんたちを演じる若手俳優たちが、平成のパーティーピープルみたいにならず、あくまで明治のトンチキはあんなだったんだろうなと思わせる説得力である。
二つの時代を行ったり来たりする手際も、さすがにあのチームだから鮮やか。

化粧が濃い目で認識するのにコンマ数秒かかってしまったが、山本美月が新聞記者役で出てくるとは! 『真夜中のスーパーカー』といい『ロクヨン』といい、作品に恵まれていてめでたいかぎり。

シンゴジラ』で活躍した尾上克郎VFX担当なのも大きな期待要素だったのだが、凌雲閣が再現されてまことに嬉しい。
その凌雲閣のそばで客を引く小梅。「押しが強く、きっぷのいい姉御肌」のよし。橋本愛がどれだけはっちゃけてくれるか楽しみだ。

副題は毎回小説のタイトルで行くのか。『小便小僧』なんて知らなかったが、上林暁なる作家の作品だそうな。


それにしても『麒麟がくる』の助演キャスティングの発表はまだか? よほどスケジュール調整で手間取ってる?? ここまで待たされた記憶がないのだが。