『女と男の観覧車』(監督&脚本:ウディ・アレン)

ここではないどこかを夢見る元端役女優のお話。80代に入っても精力的に映画を撮り続けるウディ・アレン。あと何作楽しませてくれるだろうか。

不幸な結婚生活を送っている……と思っている主婦が若い男と恋に落ちる。『カイロの紫のバラ』風味かと思いきや、かなり『ブルージャスミン』寄りであった。

1950年代のコニーアイランドが舞台で、女性のファッションがカラフル。遊園地で流しっぱなしの音楽もふくめ、何曲もオールディーズを楽しめた。

いつにもましてヒロインが語る語る。なんでそこまでアップを多用するかと思ったが。
生活に疲れた主婦の顔

浮き浮きし始めた主婦の顔

狂気交じりの女優の顔

の三段階の変化が見ものだった。ケイト・ウィンスレットはもっと大味な人かと思っていたが、今作の演技を見る限り『欲望という名の電車』のブランチもこなせそう。
上出来ではないにせよ、再婚した妻に「一緒に釣りしよう」、「一緒にボウリングに行こう」と呼びかける夫は好人物であり、日本の観客よりアメリカの観客のほうが「ヒロインはわりと身勝手」と感じそうだ。亭主役のジム・ベルーシはいかにもアメリカの下町にいそうな憎めないオヤジを好演。

ヒロインとまたも騒ぎを起こした息子とがとぼとぼ歩く後ろ姿で裏淋しく幕を閉じるのかなぁと予想しながら見ていた。予想ははずれ、ヒロインの顔を真正面から見せつけられるエンディングであった。豪華なドレスを着て厚化粧した時に、そのふるまいで内面が最大限剥き出しになるという皮肉。

アレンがまだまだ元気なら、次はさらっと粋なコメディを拝ませてほしい。