『おんな城主直虎』第45回~第46回

歴代大河の首桶登場回数のランキングを知りたくなってきた。昔の大河で首桶といったら、主人公が打ち負かした敵の大将のそれであることが多かった。今年は違う。しかもhot warの戦利品たる首ではない。大国に国を潰されないよう交渉をまとめるために、主人公の身内や親友が犠牲になった結果なのだ。

行政をていねいに描くのが今作の美点だが、交渉をスルーしないところも近年では稀ではないか。一度は信康助命をあきらめた家康が氏真に一縷の望みを託し、氏真は瀬名のために奔走、北条と同盟を結ぶ。結果的には瀬名を救えなかったわけだが、歴史の裏にはのぞんだ効果に結びつかなかった同盟……どころか、成立直前で決裂してしまった同盟が山とあるはず。歴史の教科書に太字で書かれない物語の積み重ねが、『直虎』に厚みを与えている。

信長役は多少大根でもカリスマがあれば務まるようだが、家康役はそうはいかない。『真田丸』で内野聖陽が見事な演技を披露したあとでは阿部サダヲは分が悪いかと心配したが、森下流の成長期の家康を立派に体現していて惹き込まれる。

いったいいつ見せ場がくるのかとじりじりさせられた栗原小巻は、第45回に真価を発揮。戦国の母の論理と情で家康を諭す場面は、今年のベスト5に入るはず。寿桂尼といい於大の方といい、大局を見て君主がとるべき道を冷徹に語れる女傑が出てくると、「これが大河だ!」と思える。
極私的にはここ2回の『直虎』で感銘を受けた演技者は、栗原小巻とならんで平埜生成。"正室を通して側室を選ばなかったところが迂闊"説にするかと思いきや、それはなかったので、高潔で賢い跡取りの悲劇と受け取っていいのだろう。平埜氏の再の大河登板が待たれる。この人の何がすごいって、信長とか松永弾正のような威圧系キレキャラはもっと得意なのではと感じさせるところなのだ。