『悦ちゃん』最終回

これはハッピーエンドが約束されたコメディだ。春奴は碌さんをあきらめて旦那との腐れ縁に落ち着きそうだし、碌さんは鏡子とゴールインだろうし、だったらカオルは夢月とくっつくしかないだろうと予想しつつも、負傷した碌さんが囚われの身となるシーンがことのほか長く、これはどうなることかと少々やきもきした。

鏡子と悦ちゃんのコンビは間違いない!と思わせ、でもカオルもいじらしくて可哀想だなと思わせ、だが片思いの相手を手厚い看護という形で独占する場面には、恋心というシロモノのあまり綺麗でない部分も描き……一筋縄ではいかない終盤だった。

「超絶楽しいドラマ」とのふれこみだったが、終始抱腹絶倒のコメディではなく、色恋のままならなさやら、先立つものがないと目が曇りがちな男心やら、商業主義と作家主義の相克やら、いろいろな人情の機微が温かく描かれたヒューマンドラマであった。それでいて、機微なんてものがわからない小学生でも笑ったりドキドキしたりしながら、楽しめたのではないか。
朝ドラでは明治~昭和初期の中流家庭から「ばあや」や「ねえや」の存在が消されることが多々あるそうだが、『悦ちゃん』はそのへんの考証がきちんとしていた。(そうでなければ、鏡子と碌さんの距離が近づかないということもあろうが) 日下部、大林、柳、池辺の四家族の暮らし向きの違いが、一部マンガチックではあれしっかり描き分けられていたのも階級を無視できない時代ドラマならではのおもしろさ。

橋本由香利の音楽センスが光った。よくぞ獅子文六の歌詞にぴったりなメロディーをつけてくれたものだ!
今後は"脚本:櫻井剛"のドラマがあったら、一度はチェックしてみたい。
演技面では、なんといっても平尾菜々花の功労大である。子役から年寄り役までうまい人ばかり出てきたが、最後はウルフルズトータス松本が一瞬顔を出すだけという贅沢な配役だった。