『ハウス・オブ・カード 野望の階段』第8話

脂ぎった古沢良太みたいな脚本を軸に、毎回どぎつい権力闘争が繰り広げられる。

現代のリチャード三世――と言っていいのかどうかは不明、最後にどこまで上り詰めるのかはネタバレ情報を見ない限りわからないので――フランク下院議員は、応援してきたウォーカー大統領から国務長官に任命されるもくろみがはずれ、復讐に燃える。
基本的には、主人公が貸し借りで人を動かし、借りがあることがわからない鈍い人間は脅して言う事をきかせる……ってのを繰り返しやっているわけだが、今のところまったく飽きない。第8話は初めてセンチネル軍事大学が映り、フランクにも反骨精神旺盛で熱い"いい奴"だった時期があった(らしい)ことを、旧友が語る。第7話までは演説となればつねに準備通りに雄弁をふるっていたフランクが、めずらしく己の感情をもてあます場面もある。だが〈フランシス・J・アンダーウッド図書館〉落成式が終わると、フランクは旧友と一緒の写真が載ったパンフレットを椅子に放り、腹心に選挙に向けた指示を出し、おそらく二度と(つるんでも利益をもたらしそうもない)同窓生に会うこともあるまい、と予想させるエンディングだった。
フランクの有能な戦友である妻、クレアが元カレと長電話していた。このドラマの作風からして、妻がぐずぐずめそめそして夫の作戦を邪魔するなんて展開はないとしても、カメラマンがらみで一波乱ありそうだ。中年になってもひきしまった肉体を保ち、ハイヒールとタイトなワンピースが似合うクレア。いろいろな意味でぜい肉をそぎ落として生きてきた彼女と男たちの、これからの丁々発止が楽しみだ。
"野心的"というには脇が甘く、しょせん利用されるだけで終わりそうなゾーイ。だが彼女の今後より、知事選出馬のために心を入れ替えつつあるルッソのほうが心配だ。

原作は、サッチャー政権下で首席補佐官を務めたマイケル・ドブズによる『ハウス・オブ・カード』。イギリスでは1990年代にタイトル『野望の階段』(BBC)でドラマ化され、第一部は日本でも放映された。野心をぎらつかせた田舎出の成り上がり者フランクと異なり、イギリス版の主人公フランシス・アーカートは毛並みの良い老獪な院内総務だった。狡猾な口癖、「そう思うのは君の勝手だが、私の口からは何も言えない」が忘れがたい。いかにもイギリス的な知的なドラマで、後を引く冷え冷えと怖い心理劇でもあった。イアン・リチャードソンの名演をもう見ることができないのは残念だ。

脚本家のアンドリュー・デイヴィスは英米両バージョンに参加している、と今日知った。エンド・クレジットの字がいつも小さすぎる上に流れが速すぎるので、毎回公式で脚本家をチェックしてみよう。

唯一の見るに堪える国内報道&インタビュー番組『プライムニュース』はあるし、最近は土曜の『SUPER』も加わったし、予想外に早く『ハウス・オブ・カード』を放映開始してくれたし、BSフジの極私的評価はうなぎ上りである。