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『真田丸』第32回『応酬』

巨星墜つ!の次の回だから失速しても文句は言えないところ、そんなこともなく、『応酬』のサブタイトルに恥じない緊張感のある回だった。
過去15年、大河は薄味が当たり前になってしまい、知力を尽くした話し合いや恫喝が拝めるのは『風林火山』と『八重の桜』くらいだったが、今年は会議を使った作劇が魅力的だ。そして映画館に行けば『シン・ゴジラ』というおもしろい会議映画がある。

すぐれた俳優を見るたびに、えーと『シンゴジ』に出てたっけ?と思ってしまう。内野聖陽は出ていなかった。彼はシンゴジの世界に出すには、やや"持ち重り"のするタイプなのだ。ともかく、この人は山本勘助を演じて平成史上に残る大河の主演俳優となったうえに、今年の家康役で準主役俳優としても歴史に残る演技を見せてくれている。主人公が話の折り返し地点を過ぎても若輩者というスタンスなので、ドラマの重しとして内野氏の重厚感が不可欠なのだ。過去の時代劇で家康がいい人みたいに描かれると、「ほんとは最初から秀頼を潰す気満々だったくせに」と思ってしまったものだが、今年の描き方だと、初めから天下取りの野心満々だったわけではなく、安心して天下を託せる人材が不在だと感じていたところに切れ者の家臣たちの後押しもあって、まずは三成を倒す方向にいった(のかもしれない)と納得させられる。

秀吉が死んで後始末に奔走する三成。熱い思いを秘めて事務能力はあっても、欠けたところが大きすぎて困ったもんだ、あれでは清正たちも徳川についてしまうよなぁ、という方向に視聴者は導かれる。そして、彼を支えるべき信繁も、これまでのような小才覚すら発揮することができない。
二人の若者、中堅どころとは対象的に、時代に取り残された老人の風情を漂わせていた昌幸が家康の深謀遠慮を見抜き、じつはボケてなどいなかったことを証明する。まだまだ暴れるチャンスはありそうだわいとワクワクしているようすに、懲りない奴とあきれるべきか、元気になってよかったと安心するべきか……。

寧々は人格円満な女性だが、政治家の妻としては阿茶局に引けを取るところもうっすら描かれる。

ただのグラビアのお姉ちゃんかと思っていた橋本マナミが、細川ガラシャに嵌っている。第32回にかぎっていえば、女優陣で一番時代劇らしいお芝居をしていたような。死ぬシーンもしっかり演じられたらますます見直してしまいそうだが、そこまで細川家を描くかどうか……。


再来年の大河の発表がないのが気になるが、9月24日に土曜時代劇として『忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~』が始まるのはひじょうに楽しみだ。WOWOWの『ふたがしら』も映画『超高速! 参勤交代』も続編が作られたし、来月は『真田十勇士』が公開されるし、この国はまだ大丈夫だ。

時代劇とは言い難いが、山岳写真家の田淵行男を主人公にした『蝶(ちょう)の山脈~安曇野を愛した男~』(8月21日11:00~12:00、BSプレミアム)もぜひ見たい。たまたま今日NHKドラマサイトを見なかったら、あやうく見逃すところだった。