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『真田丸』第31回『終焉』

信繁が接する世間がぐっと広がりそうな予感で終わった上田編最終回とまったく異なる雰囲気の、秀吉編最終回であった。武田勝頼北条氏政が戦って美しく散ったような印象を与えたのにひきかえ、秀吉の孤独な最期のなんという無残か。小日向文世の練達の演技やメイク術や照明などがあいまって、ここ数週は画面から病を得た老人の臭いが伝わってきそうだった。

秀吉には統治者として切れる面があるいっぽう、育ちの悪さや生来の卑しさ冷たさがにじみ出て、優秀な家臣たちもふくめて誰も暴走を止められない。秀次死去の回は、悪い方に悪い方に妄想をふくらませる秀次がひたすら哀れで、甥にそう思わせたのは秀吉の罪としか思えなかった。
本人の意図とはうらはらに事態が困った方向に転がっていく――舞台用コメディを書くときに三谷幸喜がよく使う手だ。『真田丸』ではときにコミカルな場面を挟みつつも、悲劇的な歴史劇として事態の悪化を描いてそれが成功している。
大河というメジャーな舞台で、三谷がここまで人間のネガティブな面を描くとは思わなかった。映画監督の是枝裕和に「自分はやりたいことを映画やドラマでやれたためしがない。やりたいことは舞台でしかできない」と語ったそうだが(『映画を撮りながら考えたこと』(著:是枝裕和、出版:ミシマ社)の立ち読み記憶)、今年の大河では念願がかなうのではないか。

拾が死んだ回は、幼子の病いを心配する気持ちなどこれっぽっちもない武将たちの画策を描いたが、今回は生き残る者たちが将来の絵図のために死にかけの老人に無理やり遺言を書かせる場面が二度も出てきた。うすら寒くもあり、ブラックコメディの風味もあり、今年のスタッフでないと出せない味かもしれない。

吉野大夫とその偽物を演じた中島亜梨沙が退場してしまい、残念至極。残った四十歳以下の女優陣の所作や台詞回しがいまいち軽くて物足りない。長澤まさみ竹内結子も、三谷の現代劇では魅力的な芝居ができるのだが。四十代(?)の吉田羊も、もうちょい重みというか格調がほしい。
ときに滑稽味を漂わせながらも、基本的には見識がある真田の次期棟梁を演じきっている大泉洋はすばらしい。


関ヶ原の合戦シーンにじゅうぶん予算がついたのだろうか? 陣中の会話劇だけでも魅了してくれるとは思うが。石田三成大谷吉継が、大河史上もっとも惜しまれながら退場する展開が待っている。
九度山編は高速で飛ばすのか否か? 信繁視点だとちょっと退屈な話になりかねない。信幸と家康の比重がぐっと上がるのか?

4年前の大河では、考証担当がツイッターを使って現場ネタで愚痴ったり特定のファンと馴れ合ったり、いちじるしくプロ意識に欠けるふるまいを見せた。今年はそれとは打って変わって、ツイッターがありがたいツールとなっている。丸山和洋氏による歴史の講義とドラマ制作の説明は、無料で読むのが申し訳ないようなハイレベルな内容だ。あとで新書にまとめるような企画でも持ち上がらないものか。