『ダウントン・アビー4』第9回『社交界』

イギリスの映画やドラマは、アメリカ人を田舎者あつかいするシーンになるとますます冴えてくる。今回は何度も声をあげて笑ってしまった……にしても、ハロルドの造形はやりすぎではないか? あるいは彼に「イギリスに文句は言わないよ。ぬるい風呂とか、ぬるい酒とか、まずい料理とかね」と言わせることでバランスを取ったのか。カーソンがアメリカ人丸出しの従者に目を白黒させたり、いきなり腕を組んでくる(!)マーサの横で寿命が縮まったような顔をしたり、なんともお気の毒。

国王謁見の儀式での招待状の取り扱いなど、『真田丸』の考証の先生並みにスタッフが研究したのだろうなと思わせて興味深かった。

貴族階級の現実主義者バイオレットと中産階級の良識派(&ときどき独善的)イザベルの丁々発止も愉快。どぎつい事件より、レトリックに工夫をこらした会話場面こそこの作品の醍醐味だと再確認した。

長女メアリーは、仕事にかかわるなど考えたこともなかったのに、夫を亡くしたのち、トムやバイオレットの励ましなどもあって領地管理に興味を持つように。3ヶ月かけても(そして、SNS情報によれば5ヶ月以上かけても)成長が描かれない加野屋のサザエさんとちがって、ほんの2、3話で農場経営者としてのメアリーの成長を描いた『ダウントン』スタッフ、キャストには敬服したのだが、今回はその話が出なかった。次回はシーズン終了回なので、一つでもポイントとなる農場エピソードが欲しい。妹との同室をいやがるようなところだけは子供のままだが、一族の長の代理としてロスにローズとの恋をあきらめさせる場面では、洗練されかつ思いやりのある交渉術を示して痺れさせてくれた。

ロザムンドは登場時、なんだが下世話でいやな印象だったが、このシーズンは好感度急上昇。現実を見てしかるべく対処できるところは母親ゆずりなのか。反対に、ちょいちょい現実を見失うのがお兄様だ! イーディスが予告で優し気な男性から「幼子のことも引き受ける」みたいなことを言われていたが、まさかまたしても騙される?? もしあの男性と結ばれる展開なら、この作品世界ではマイケルが生きて戻ってきて揉めに揉めるしかないのだが。

モールズリーがない知恵を絞ってバクスターを救ってくれたら拍手喝采したいところだが、まさかトーマスの返り討ちにあうのか? 次回タイトルは『恩返し』。ベイツについてすっきりしないうちにシーズン終了はやだなぁ。