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『真田丸』第7回『奪回』

およそ三谷幸喜くらいマチズモからかけ離れたイメージの脚本家もいないし、今年の大河の演出風味は、硬硬軟軟硬軟軟……みたいな感じだが、大名も国衆もおのが勢力範囲を拡大するため生き残るために、優しさなんぞとは無縁のところで知力胆力をつくして戦うドラマが展開している。1月のワクワク感が糠喜びになる心配はもうなさそうだ。

当分は実質的な主人公が昌幸のまま行きそうなのも、安心材料の一つ。ドラマ開始後2か月時点で比較すると、単位時間あたりの嘘つきだまくらかしの頻度は、9年前の山本勘助を上回っているかもしれない。滝川一益からの応援要請に応じるようなふりして助けずに、岩櫃沼田を取り戻し、一益に面と向かってしらを切り、いい人モードのエンケン景勝の前に出れば神妙な顔つきで「真田は上杉の兵でございます」とほざき、館に帰れば「上杉をだまして北条へのみやげにする」と宣言する。いいなぁ、この食えない親父! 年間通して何回嘘をついたか、正の字で数えて行ったらたいへんなことになりそうだ。

信繁が人質となったばば様を助け出すために、小諸の兵には滝川の者だと名乗り、滝川の人間には小諸の兵だと名乗る。三谷らしくさらりと「その場限りの嘘で窮地に陥る主人公」を描いて、視聴者をハラハラさせる。
見張り番、見回りの兵など、色々な職務についた人間にそれぞれきちんとした口の利き方をさせているところも好印象。

おおかたの人間が本音を悟られないように苦労するいっぽう、脳と口が直結している(ことが多い)きりが随分と反感を買っているようだ。間口を広げるために敢えてやっているのか、三谷節の悪いところが出てしまったのかよくわからないが、「はん?」はないだろー、三谷さん。せっかく『モテキ』などでキャリアアップしてきた長澤まさみ嬢がちと気の毒。ただし、声が割れるのは女優さんが稽古を積めば解消することではないか。
三十郎役の迫田孝也はコメディ演技は危なげないし、しかるべき場面では緊張した表情を作れるし、堺雅人のよき伴走者だ。
直江兼続を演じる村上新悟は低音の魅力で、たたずまいもいかにも有能な忠臣。出番はわずかなのに、すでに『天地人』の敵を取ってくれた感じで嬉しい。

タイトルに反して「奪回」できなかった第7回。しかし来週はタイトルどおり「調略」に成功できるもよう。
なつかしの香坂虎綱の次男、春日信達が出演とな。で、出てきてすぐに○○○○なのか……。