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『真田丸』第1回『船出』

大河ドラマ

にやけちゃだめだ、にやけちゃだめだ、にやけちゃだめだ……

『花燃ゆ』でさえ初回には光るところがあったし、『軍師官兵衛』だって7回くらいまではそこそこおもしろかった。終盤失速した『八重の桜』も初回は重厚かつ繊細で、ついに本格大河完全復活かと思わせた。
今回最大の懸念材料は、『江』をやらかした数年後に傑作『64(ロクヨン)』を制作した屋敷Pというわけのわからないご仁。アンパンマンみたいなキャッチフレーズをかかげるセンスも心配だ。

と、いろいろ腰が引けつつも、初回を見終わった時点では次回が楽しみでたまらない。そして、土曜日の再放送を録画したくなってきた。

幅広い視聴者を獲得するための「内容薄めて砂糖をぶっこんでおけばお茶の間ホイホイ」みたいな方向ではなく、事前のPR番組で多面的なおもしろさを訴えたり、立体感のあるCGで城の所在地や諸勢力の比較をわかりやすく見せたり、丁寧なナレーションを入れたり、と誠実なサービスを提供しているところに好感が持てる。

題字を筆書きではなく有名な左官職人によるコテの作品にして、それが力強さを感じさせる。
OPの音楽は正直『平清盛』や『花燃ゆ』のほうが好みだが、バイオリンの旋律が耳にこびりついてしまった。

せっかくの新築の城を捨てて岩櫃城に移ると決まってからの真田家中。深刻ぶらずに、裏切ったり裏切られたり、人質がはり付けにされたりの戦国事情を語り合うのはいい。いいけど、やっぱ現代劇を演じる小劇場のノリだよなぁ~覚悟してたけど……。

と思っていたら、勝頼が真田兄弟のもとを訪れるシーンから勝頼が小山田たちに裏切られるシーンまで、こちらの不意を突くような、ちょいと骨太でドラマチックな脚本と演出であった。今後もこの割合で重厚風味を見せてくれれば、予想以上にストレスが軽くてすみそうだ。

今回と次回のMVPは気品ある殿さま演技の平岳大になりそうだ。過去10年で気品ある武将といえば思い出すのは、『風林火山』の今川義元谷原章介)と『八重の桜』の松平容保綾野剛)。平岳大が割り当てられる役は小才覚のある策士が多い印象だが、今回はタニショーの腹黒さや権高とは無縁で、かといって綾野剛のように見るからに悲劇的で胃痛持ちの貴公子という雰囲気でもない。親父比で非情になりきれない甘さほか欠点はあれど、この人なりによき大名足らんと務めてきたにちがいない、真田兄弟にとっては名君なのだと思わせる役作りで惚れ惚れした。

軽みだけじゃないのね、と視聴者に思わせたうえ、終盤たたみかけるように織田、北条、上杉、徳川の面々が映る。ぐいぐい来る!という感じである。

堺雅人はちょいちょい古美門が顔を出すが、クレバーな人だから時間の経過に合わせて人格の成長を見せてくれるだろう。大泉洋の真面目一方の演技が新鮮。
昌幸がほかの武田家臣から「安房守」と呼ばれていて嬉しい。次回からもこの調子でお願いしたい。
1月のサブタイトルは、『船出』、『決断』、『策略』、『挑戦』。基本は硬派にしますよ!ということなのか。最終回まで全部2字熟語だったら感動する。