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ドラマ、ゆく年くる年

単発ドラマ 大河ドラマ 特別企画 連続ドラマ

今年は『64(ロクヨン)』、『洞窟おじさん』、『経世済民の男』シリーズ、『天皇の料理番』、『大杉探偵事務所~砕かれた過去編』がほぼ横並びのベスト5。次点で『一番電車が走った』。『料理番』は最近の大河に欠けた部分を描いているところが好きだったが、あれから半年たった今、昔の日本人を描くふりをしていろいろ巧妙に逃げている朝ドラとくらべても偉かったとあらためて思う。
ピエール瀧は芝居におぼつかないところはあっても存在感は圧倒的だし、リリーフランキーは先天的に演技のセンスに恵まれているとしか思えない芝居だった。専門的訓練を受けていない人がキャストのトップに立てる俳優業とは、独特の職業だとつくづく思う。彼らとは反対に、プロの俳優としての仕事を見せてくれたのが佐藤健。ハリウッド的な若者向け殺陣をマスターしているのも彼の強みだが、どこぞのプロディーサーが重量感とタメのあるチャンバラものをオファーしてくれないものか。

『おかしの家』も上記に加えたいのだが、一週間いつでもネット視聴できるからと油断していて2回も見損なったので、番外。ほろ苦い寓話的世界で完結するのかと思いきや、とちゅうから〈さくらや〉裏庭仲間がきつい現実世界を突きつけられる展開だった。太郎と三枝がフリーター状態を脱出するのも予想外。社会人として責任を持つようになると、大事に思ってきたものの優先順位を落とさざるを得ないことを描くところが、よくある子供っぽい"逃げ"のドラマとは違う美点。『川の底からこんにちは』を作った石井裕也だから当然といえば当然か。

そのほかでは……『デート』は最後の2回が湿っぽくなったのだけが残念。『民王』はエンケンを筆頭にキャスト陣のコメディセンスを堪能。圧倒的に笑えたのは初回だった。
神谷の旦那が出ると聞いて『下町ロケット』の後半を視聴。まー登場人物が語る語る語る。男版"橋田壽賀子劇場"か!と思ったが、実は橋田作品はろくに見ていないのだった。阿部寛の個性は好みだが、あまり滑舌がよくない人が長台詞をしゃべらされ、「技術者」を連発させられているのを聞くのはちと苦しい。終盤は、小泉孝太郎の悪役演技に痺れた! 黒いオーラというより、プラチナのような光を放っていた。大河の徳川慶喜もはまり役だったし、宮部みゆきドラマでの知的で誠実で繊細な演技もよかったし、意外と守備範囲は広いのか?

 

時代劇はやはり『神谷玄次郎捕物控2』。主演の高橋光臣は正月の『鬼平SP』でも好演。『まんまこと~麻之助裁定帳~』は、町名主とからめて江戸の人間模様を温かく描いた佳作。主演の福士誠治と趙珉和のコンビがある程度できるのは予測がついたことだが、時代劇初出演の桐山漣のまったく危なげない芝居に驚いた。


以下は来年の楽しみ。
1月2日『富士ファミリー』(NHK総合
木皿泉作。それだけで見る価値があるはず。テーマの提示やスターの顔見せのためではなく、「ひとつの世界を作りたい」から書きつづける貴重な脚本家である。正月そうそう豊かな気持ちになれそうだ。

1月2日『夏目家どろぼう綺談』(テレ朝)
今年活躍した桐谷健太が漱石と聞けばぜひ見たい……のだが「一部地域を除く」の「一部地域」に暮らしているせいで見られず、がっくり。

1月3日『吉原裏同心~新春吉原の大火~』
薄墨太夫(野々すみ花)より香瀬川太夫(安達祐実)が活躍しそう。安心安定のレギュラーメンバー貫地谷しほり近藤正臣山内圭哉三宅弘城に再会できるのが楽しみ。

1月3日『大江戸炎上』(BSプレミアム
明暦の火災後の復興プロジェクトを描く。高橋一生保科正之とはすばらしいキャスティング

1月9日『逃げる女』(NHK総合)
鎌田敏夫作。鎌田作品の前宣伝として、『バブル』(2001年)を再放送してくれんかなぁ。実質上の主人公がワルだから時流に合わない? 平成の金融ドラマ、大人の男も女も活躍するドラマとして、不動の極私的ベストワンなのだが。

1月9日『荒地の恋』(WOWOW)
原作:ねじめ正一荒地の恋』。演出:渡邊孝好。脚本:渡邊孝好、黒沢久子。主演:豊川悦司鈴木京香
第一回のみ先行放送で視聴済み。WOWOW私小説風ドラマはとんがったものが多かったが、今作には堂々たる文芸ドラマの趣を感じる。スタッフは『死の棘』をやりたいのか? 大島ミチルの壮大なテーマ曲が印象的だ。

1月10日『真田丸』(NHK総合
黄金期の大河のレベルは求めないから、『風林火山』の力強さや『八重の桜』前半の格調や『平清盛』の豊饒な音楽や神がかり演技は期待しないから、とにかく1年通して楽しませてほしい。時代考証の先生が「めずらしいくらい自分の意見が通る」とおっしゃっているとかで、期待がふくらむ。

1月10日『鴨川食堂』(BSプレミアム)
池端俊策が参加するならおもしろいのでは? お久しぶりの萩原健一が主演。放送終了までは悪さしないように!

1月13日『フラジャイル』(フジ)
この人が主演なら作品がおもしろそう、と思わせる唯一の人物が長瀬智也。とはいえ天才医師って柄だろうか? 最初は彼が主演候補ではなかったという情報もあり、完走の自信がない。演出が『リーガルハイ』、『デート』と同じなのはやや心強い。しかし『リーガルハイ』の稲田秀樹Pが見捨てたフジに未来はあるのか?!

1月14日『ちかえもん』(NHK総合)
曽根崎心中』ができるまでを描く木曜時代劇。題材も、青木崇高早見あかり北村有起哉松尾スズキといったキャストも魅力的だが、脚本がかなり心配。藤本有紀はヒステリックな登場人物に言わずもがなのことを言わせすぎる傾向がある。今回はそれを抑えてもらいたい。

1月27日『インディゴの恋人』(BSプレミアム
新井浩文がジャズピアニストの夢をあきらめてデニム加工職人として働く男、とな。地方発のBSPドラマは快作が多いので今回も期待。

2月27日『恋の三陸 列車コンで行こう!』(BSプレミアム)
今の日本で貴重な"映画俳優"安藤政信が出演!

3月『精霊の守り人』(NHK総合
脚本家で大森といえば断然、寿美男である! ファンタジーの世界をどんなふうに映像化するのか、予想もつかない。

夏『百合子さんの絵本』(NHK総合
"諜報の神様"小野寺信の元活動仲間にして夫人を主人公にしたドキュメンタリードラマ? ほとんどフィクション? NHKがこの手の話を作るとなったら、小野寺氏たちの活動もふくめた日本全否定になりがちだが、脚本が池端俊策というその一点に望みをかける。

1月の希望ドラマ完全視聴はちょっと無理かも。