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今年の時代劇ドラマ

今後はもう『神谷玄次郎捕物控2』超えはないと思われるが、少々興味をそそられるのは……

ふたがしら』(WOWOW)
NHK以外で――正確には朝ドラと大河以外のNHK以外で――唯一、質を追求できるチャンネルとして、時代劇にも挑戦してほしいけれど、新参者には無理か……となかばあきらめていたところ、初時代劇の朗報が!
オノ・ナツメの原作は未読。
第一回を見たかぎり、予想を超えるおもしろさであった。松竹作品の黒を基調とした渋いかっこよさでなく――本作は東映が協力――アースカラーの衣裳や小物がモダンな雰囲気を出している。オノ・ナツメ原作のアニメ『さらい屋五葉』と色彩のセンスが共通しているが、色使いについて原作者に助言を仰いだりしたのだろうか? 色調以上に印象に残ったのが、SOIL&"PIMP"SESSIONSのポップなBGM。監督の入江悠は三隅研次伊藤大輔を好むようで、なるほどなと思わされる。現在、三十代半ばでこんな活動屋気質の監督がいるのはなんとも心強い。
主人公コンビの判断の基準が「おもしろいか、つまらないか」なのが楽しい。脚本は劇団☆新感線で鳴らした中島かずき。毎回、昂揚感のある展開で楽しませてくれそうだ。よくある「犯さず殺さず」ではなく「脅さず殺さず」にしたのは、そのほうが響きがいいから?
経験から言って当たり前と言ってしまえばそれまでだが、宗次を演じる早乙女太一が抜群の江戸もの芝居力――演技より芝居という言葉がぴったりな役者だ――でみんなをぐいぐい引っ張る。いまだに二十代前半と聞いて驚く。では、『風林火山』撮影時は15歳前後!? 弁蔵役の松山ケンイチは、清盛よりは合っているが、台詞回しとか表情演技とか、監督はもうちょっと指導してほしい。ワルな姐御を演じるのがモデル出身の菜々緒で、玄人っぽくさまになっている。やはりモデル出身の山田優は『新宿スワン』で完全にプロの女優だったし、センスさえあれば、スタート地点は関係ないということか。

BSジャパン開局15周年特別企画『松本清張ミステリー時代劇』
この4月から第一、第二火曜日のみ放送。回によっては外連味がなさすぎると言えるほど地味だが、どの話もまじめで丁寧な作り。鬘は、通常のものより江戸の絵画に近い、月代が広いタイプを使っている。この手の作品を作りつづけていれば、技術は継承されそうで安心だ。欲を言えば、案内人はもうすこし滑舌のいい人を。

『風の果て』(BSプレミアム
再放送のたびに見ていたのに、意外と青年パートが長く感じられ、記憶力の減退を痛感。今週放送回は又左衛門の悲劇、すさみきって、しかし惻隠の情を失わない市之丞のまなざし、編み笠をかぶった女人の行列の美しさが見どころ。女たちが鳴らす鈴の音が効果的に使われていた、はず。[またまた記憶違い。女人がかぶっていたのは黒頭巾で、鳴らしたのは鉦だった……こりゃ完全隠居したほうがいいか、タイトルを『瘋癲老人日記』に変更すべきか? 6月20日追記]
三浦アキフミは『ウォーターボーイズ』で出てきた俳優陣のなかでは一番地味だが、一連のBS時代劇や映画『長州ファイブ』など、佳作への出演が多い。高岡蒼甫(現在は"奏輔")の面構えは合戦向きと思うが、『真田丸』のオファーはあるだろうか。

『まんまこと』(NHK総合
7月スタート。畠中恵原作の江戸ミステリー。主人公は民事を裁定する町名主の跡取り、とあまり聞かない設定だ。主演の福士誠治は期待大。現在放送中の木曜時代劇『かぶき者慶次』は、OPは何度見ても聞いても魅力的ながら、小松殿の筆が冴えるなんて奇跡はついに起こらず、若手のみなさんはあまり向上せず、朗々たる台詞が魅力的だった神尾佑が退場した時点で、ついに脱落。

BSフジの『鞍馬天狗』再放送は、土方を演じる成田三樹夫が華麗な殺陣でも見せてくれんのかと無駄に期待したが、もちろんそんなことはなく、コメディパートに乗れないのと主演の甘さが好みに合わないのとで、早々に脱落。

大河ファンに絶大な人気を誇る『独眼竜政宗』再放送を、今年やっと見た。たしかに力強い傑作だし、喜多、片倉小十郎姉弟の頭よさそうな台詞には毎度痺れたが、強いて言えばときどきホームドラマに偏るところが好みに合わず。格調と娯楽性のバランスやスケールの大きさでは、『太平記』が一番と思う。格調高すぎ、幽玄美に走りすぎた『花の乱』はまた別種の傑作。